アリババのジャック・マー「インターネットはビールのようなもの」――中国CEO名言録
バイドゥのロビン・リー「人生というのは、混み合ったバス」
続いて、「バイドゥ」の創業者である李彦宏(ロビン・リー)は、山西省陽泉市で地元トップの成績で北京大学に入学している。二浪で地方大学にギリギリ合格だったジャック・マーとは対照的な秀才である。
ロビン・リーは北京大学卒業後はアメリカに留学し、インターンシップで米国松下電器産業で働いていたこともある。松下電器での経験については「この3か月間の経験は、今後の職業選択をする上でとても重要な意味があった」と語っている。
ロビン・リーは99年に中国に帰国すると、ベンチャー・キャピタルの投資を得て、「バイドゥ」を設立。当初はたった8人で始めた会社が、今や世界的な大企業へと成長した。彼は創業者として、たとえばこんな言葉を発している。
“政策決定は、はじめは民主的に行い、最後は一人が行うのが良い。最初は社内・社外問わずできる限り広範囲に専門家や関係者から意見を聞く。その後はプロジェクとの中心となる少人数で話し合いを行う。そして、最後に判断は私がするしかない。誰が責任を負い、誰が主体となるかを明確にするためだ”
日本の多くの企業や組織が“責任者不在”に陥る一方、こうしたバランス感覚を持ったワンマン社長からは、力強さや決定力の高さを感じる。さらに、一人の人生をこんな風にも例えている。
“人生というのは、混み合ったバスみたいなものなんです。最初はひどい混雑だと思えるだろうけど、揺れに身を任せていると、そのうち混んでない場所を見つけられるし、ひょっとしたら不意に席が空くこともある”
人口の多い中国では、バスや地下鉄など、混雑したシーンはとにかく多い。人生を“混み合ったバス”に例える比喩は、生きていくのは決して楽ではないけれど、どうにか居場所は見つかるはずだという前向きさを感じる。
また、ロビン・リー自身は北京大学を卒業した秀才エリートだが、こんなことも言っている。
“中国でも、これからは大学に行かずに何十億、何百億、何千億元規模の会社を起業する人間が出てくるかもしれない”
日本でも、古くはソニー創業者の盛田昭夫や、最近ではホリエモンなどの起業家たちが「学歴不要論」や「大学不要論」を唱えている。大学のへ行くことの価値が、以前よりも重要ではなくなっているのは、世界的な潮流かもしれない。
テンセントのポニー・マー「どんな事業にしろ、私は冒険を好まない」
「テンセント」を創業した馬化騰(ポニー・マー)は、一般的な起業家に比べると、起業家らしからぬタイプと言えるかもしれない。
海南島の共産党員の官僚の家庭に生まれ、13歳から父母とともに深センに移り住み、深セン大学を卒業したポニー・マーは、27歳でテンセントを創業。いわゆる育ちの良い坊ちゃんタイプだ。
起業家というと、楽観的にものごとを捉え、大胆にリスクを取りにいくイメージだが、彼はそうではない。
“成功したければ、リスクを避けなければならない”
“どんな事業にしろ、私は冒険を好まない”
起業家としては小心者の部類に入りそうだが、こういう慎重な発言はむしろ新鮮に感じる。リスクを取って成功する者もいれば、リスクを避けることで成功するタイプもいるというわけだ。慎重派でありながら、次のような発言もある。
“私は自分の仕事について、遠大な計画を立てるのは好きではないのだ”
中国社会はとかく変化が激しく、法制度などが突然変更されることも珍しくない。“計画を立ててもムダ”となるケースが多いため、いくら慎重タイプでも、長大な計画は立てる気にならないのだろう。
三者ともそれぞれ個性あるが、これからどのように中国社会をリードしていくのか、今後も注目したい。
<TEXT/西谷格>