中国離れが加速するハリウッド。次なる舞台は“柔軟でオープン”な隣国か
各国の“急激な中国離れ”を尻目に、破竹の勢いで発展を遂げるインド。この流れはアメリカ映画業界へも席巻中である。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』『バズ・ライトイヤー』『ソー:ラブ&サンダー』。記憶に新しいこれらのハリウッド映画は、実はすべて中国では未公開。その一方でアメコミ映画が大ブームとなっているインドとあっては、製作各社が方針転換に踏み切るのも当然のことだろう。
年間に1100本の作品を鑑賞する映画ライターの筆者(@MovieBuffys)が、話題作の公開状況や興行収入を基に、中国からインドにシフトしつつあるハリウッドの皮算用について紐解いてゆきたい。
ディズニー作品が中国で続々非公開なのはなぜ?
「国家資本主義」ともいわれる経済戦略が花開いた中国。強大なチャイナマネーを築いた反面、「言論統制」の壁がいまだ堅固にある。ハリウッド作品の公開停止要請も、不透明な部分が多いのが実情だ。
『アナと雪の女王』を筆頭に、ポリティカルコレクトネスに配慮した映画作りをしているディズニー映画は顕著に影響を受けているようで、コロナ禍以降の作品では『ナイル殺人事件』と『ミラベルと魔法だらけの家』の2作しか公開されていない。
対応が厳しすぎるような気も…
特にLGBTQに関する描写に厳しいといわれ、『バズ・ライトイヤー』『ソー:ラブ&サンダー』は、同性間でのキスシーンなどを理由にNGとされたようだ。
さらに厳しいのは『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』への対応だろう。この作品が公開禁止とされたのは、背景に数秒だけ写り込んだ新聞『Epoch Times』(大紀元時報)が原因だという。たしかに同紙は中国共産党に批判的な新聞だが、その程度ならCGで消すこともカットすることも容易なはず。上映自体を中止にするとは、当てつけのような意識が働いている気さえもする。
実際、こうした事態をディズニー側も重く受け止めたようである。「中国市場なしでも問題ないと確信している」とは、2022年5月の決算報告の中で、ディズニーのCEOボブ・チャペック氏が株主に対して発した言葉。「中国で公開しない」わけではないにせよ、「中国市場を見越した映画作りをやめる」宣言と解釈できるはずだ。