部下を叱れない上司が増えている?職場がギクシャクする深いワケ
価値観の多様化に上司はついていけない
旧来のマネジメントから抜け出せない管理職にヒアリングをしていると、部下の世代と価値観が大きく異なることに気づきます。最も大きな違いの一つが、キャリア観です。近年は、誰でも「出世したい」「稼ぎたい」と願っているとは限りません。
共働きを前提に将来設計するケースも多く、担う責任はほどほどで、お給料もそこそこでいいから、プライベートを充実させたい人が増えています。上司が「みんな稼いで、出世したいはず」という価値観で部下に接すると、大きなズレが生じます。
ある工場経営者の例をお話すると、若手の部下が結婚して子どもができたとき、上司は、「男は一家の大黒柱だから、コイツは家族を養うために稼がなければならない」と考えました。そして良かれと思い、残業の仕事を増やしたのです。
でもその部下は、共働きで奥さんの育児休業給付金も入るし、残業代で稼ぐより、奥さんや子どもとの時間を大切にしたいと考えていました。「出世にも大して関心がないのに、なんでこんなに残業させられなければならないの」と感じて、モチベーションがどんどん下がってしまったのです。
世代によって大事にしたいことが違う
こうした意識の差は、人材サービス企業が行なった調査でもハッキリと現れています。「仕事の目的」については、上司世代、部下の世代ともに「収入を得るため」がという回答が9割を占め、また「社会的に自立するため」と言う回答も、どちらの世代でもともに半数以上で差がありません。
しかし、たとえば「やりがいや達成感を感じるため」は、上司世代51.6%、部下世代は33.2%と18.4%の違いがあります。また「仕事をする上で重視していること」という質問では、「安定して働けること」を、上司世代、部下世代、ともに重視しています。
そして、大きな差があるのが「残業が少ないこと」で、上司世代22.2%、部下世代46.6%と、2倍以上の数値となっています。「休暇が取りやすいこと」も、部下世代は61.4%と半数以上が重視しているのに比べ、上司世代は39.4%しかいないのです。
「理想の上司像」について、上司世代の票を部下世代より多く集めたのは、「仕事を任せてくれる」「挑戦しがいのある仕事を任せてくれる」「公平に評価してくれる」などの項目でした。一方で、部下世代の票が上司世代より上回ったのが、「仕事で困ったことについて相談に乗ってくれる」「仕事のミスがあっても叱らない」「自分の話を真剣に聞いてくれる」となっており、大きな違いが見てとれます。
こうした違いを認識せずに、自分の価値観を押しつけてしまうと、部下からは「ダメ上司」の烙印を押されてしまうのです。