部下を叱れない上司が増えている?職場がギクシャクする深いワケ
職場の居心地が悪い、上司(部下)との関係がうまくいかない――。そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。ここ数年は、個々の能力を最大限に引き出す「1on1ミーティング」を導入する企業も増えています。
HRテクノロジーとコンサルティングを組み合わせた人事課題解決を行ってきたEDGE株式会社代表取締役の佐原資寛氏も、社員一人ひとりの個性に合わせた「1on1マネジメント」を重視する一人。
部下が伸び伸びと能力を発揮できるマネジメントのコツを披露した佐原氏の著書『成長する組織をつくる1on1マネジメント』(ビジネス社)より紹介します(以下、同書より一部編集の上抜粋)。
部下を叱れない上司が増えてきている?
大きな変化にさらされているマネジメントの現場で、いったいどんなことが起こっているのか、そして、管理職は何に困っているか、私たちがコンサルタントに入って実際に見聞きした経験からお話していきましょう。
旧来のマネジメントでは、上司のやり方が絶対であり、従えない部下は叱責の対象でした。よく、部下の処世術として、「自分の提案をOKしてもらいたかったら、上司の機嫌がいいときを狙え」というのがあります。
考えてみたら、上司の機嫌をうかがっている時点で「上司の感情の起伏に対応しなければならない」と、暗黙のうちにみんなが理解しているということになります。
部下の機嫌を損ねたら辞めてしまう
一見すると、理不尽に思えるかもしれませんが、社会人になったら、このように理屈では割り切れない場面はたくさんあります。それこそ、取引先の状況や機嫌次第で、発注がもらえたり、もらえなかったりすることもあるでしょう。
でも、そうした状況でも臨機応変に対応し、乗り越えていくことが社会人としての成長だと考えられていました。だからこそ、上司は部下が思い通りにならなければ、叱ることがよくあったのでしょう。
実は私も、年上の10人の部下を持っていたとき、言い訳が多い部下に対して、「できない理由を並べたてるヒマがあるなら、できる理由を考えて持ってこい」などと、感情的に叱ったことは一度や2度ではありません。そうして全員がいなくなったということは、お察しの通りです。
昨今は、部下は納得いかないことを押しつけられると、「だったら、そんな理不尽なこと言われない会社に行こう」と、すぐに考えます。以前とは逆に、部下の機嫌を損ねてしまったら辞められてしまうので、上司は部下を叱ることができなくなっているのです。