寿司が1貫59円から!一大勢力を築く「寿司居酒屋チェーン」独自の出店戦略
臨機応変にモデルチェンジ
飲食店は、いち企業だけではどうにもならない世界の情勢に売り上げが左右されることもある。そうした局面でも、機動力を発揮し、即座に業態変更することで大きな損失になることを避けてきたという。
「リーマンショックが発生した2008年、それまでは『や台ずし』を多く出店していたんですが、一気に不景気になってしまい寿司を食べる人が減りました。そこで、全品税別280円でお酒や料理を提供する居酒屋『ニパチ』に業態転換を行ったんです。
そして、大人数での飲み会が避けるようになったコロナ禍では、『ニパチ』にした店を、また『や台ずし』に戻したりもしました。2020年のはじめには『ニパチ』は70店舗ほどあったんですが、現在は半分以下になっていますね」
店で魚をさばく利点は新鮮さだけじゃない
内装を自社でまかなうことで、様々な部分で経費が抑えられる。その分、同価格帯の飲食店以上に人と金を投資できるため、利用者にとっては美味しいものを安く(寿司が1貫59円~)食べられる結果になっている。同チェーンの味へのこだわりについて山田氏に聞いてみよう。
「チェーン系の居酒屋で寿司を出す店舗の中には、冷凍したシャリを解凍して出すお店もあるんですが、弊チェーンはもちろん冷凍ではありません。注文ごとに職人が1貫ずつ握って提供しています」
これだけの店舗数を誇りながら、意外にも「や台ずし」はセントラルキッチンを持っていない。それは、美味しさにも寄与しているだけでなく、そこから生まれるメニューもあるという。
「魚は店舗ごとにさばいています。切った部分から鮮度が落ちていくので、そうすることで新鮮なネタを提供することにつながります。また、調理の工程で出たアラや骨も『あら煮』や『骨せんべい』として活用しています。セントラルキッチンで調理をして捨ててしまうと、それらはお客様には提供できないですし、ロスも減って経費削減にもなります」