「ピザポテト」は“お好み焼き”の転換?カルビーの“神”が語る、ヒット商品の作り方
日本のポテトチップス市場の約7割を占め、ポテトチップス界の絶対的王者に君臨するカルビー。そんなカルビーの中でも熱狂的なファンが多いのが、「ピザポテト」と「堅あげポテト」だろう。あまたの商品があるなかで、両方とも自社の人気商品ベスト10にランクインしているのだ。
1992年から発売開始し、2022年で30周年のアニバーサリーイヤーを迎えた「ピザポテト」。北海道では1993年から、全国では2005年から愛され続けている「堅あげポテト」。この2つのロングセラー商品は、実はどちらも同じ社員が開発を担当したという。そのレジェンド開発者である、遠藤英三郎氏に話を聞いた。
開発では商品の核となる部分を意識
――ピザポテトや堅あげポテト以外にも、「ア・ラ・ポテト」「ポテトチップス 九州しょうゆ」なども担当されたと聞き、大変驚きました。なぜ、ヒット商品を連発してこれたのでしょうか。
遠藤英三郎(以下、遠藤):いつも意識していたのは、商品の核となる部分ですね。私は「プライマリーベネフィット」と呼んで、最重視してきました。「こんな特徴がある商品だからこそ買いたい」と思ってもらえるよう、コンセプトと品質をひたすら作り込むんです。
とはいえ、本当実際の現場では泥臭いことばかり。ピザポテトの前身である「イタリアンピザ」の開発時は、チーズフレークがポテトチップスの表面に全然乗せられなくて相当苦労しました。が、アンケートを取ると「ピザ好き」の方からのチーズフレーク人気が高く、削ってはいけないポイントだと感じたんです。
タイムリーヒットを飾る商品も大事ですが、ブランドの顔となるような商品を作りたい。そう思い続けてきたので、どんなに失敗が連続したとしても、各商品の根幹となる要素は決して妥協しませんでした。
世界中に影響を与えた「堅あげポテト」
――堅あげポテトが全国で流通するまで、なんと12年ものタイムラグがあります。これも「こだわり」が理由なんですか?
遠藤:「堅あげポテト」は、少子高齢社会のなか、大人向けのコンセプトが大当たりしました。しかし原料にせよ製法にせよ、かなり特別で特殊なものなんです。そのため先行販売した北海道で人気が出ても、大量生産のラインへすぐには乗せることができなかったんですよね。
当時、日本では堅い食感を持つポテトチップスはありませんでした。海外ではシェアが小さいながらも根強く人気のある商品として発売されていましたが、とても日本人の感性に合う品質ではありませんでした。我々は品質の課題を解決すために、機械メーカー側と一緒に設備の改良を繰り返しました。
どうやらその機械が「世界の標準モデル」になった、なんて話もあるようなんです。実際、各国のあらゆる堅いポテトチップスの品質が底上げされたと感じています。誇らしい一方で、品質管理は日本が最高水準。手前味噌ではありますが、“世界一おいしいポテトチップス”は「堅あげポテト うすしお味」だと思っています。