コロナ前から赤字だった「白洋舎」。苦境のクリーニング業界の懐事情
規模縮小の方針が経費削減につながる
2021/2期はやはり白洋舎と同じくコロナ禍で大打撃を被ったようです。スーツなどビジネスウェアの入荷が大幅に減少し、売上高は前年の4分の1も減少しました。
前年までは事業取得で拡大路線を走っていましたが、このような状況では方針転換を避けられず、6工場の閉鎖や店舗の統廃合を余儀なくされています。直近で公表された2022/2期成績もコロナ前の水準に戻ることはなく、売上高は前年を下回っています。
最需要期である春の衣替え期に緊急事態宣言が発令されたほか、オリンピック期間中における外出控えの発生が影響したようです。一方、利益面では前年度から実施している規模縮小の方針が経費削減につながり、赤字幅を抑えることができました。この点は白洋舎と同じです。
業績の回復はコロナ後に持ち越しですが、首都圏を中心に店舗数を増やしてきたとはいえ、業界全体の規模は縮小し続けています。店舗ビジネスがメインのため、白洋舎のようなリネンサプライ事業による伸びも期待できず、長期で成長し続けることは難しいでしょう。
他事業参入が難しい業界。寡占化が進むか
業界全体の動きをみていくと、個人や零細企業が運営する街中のクリーニング店は経営状態が悪化しており、大手の傘下に入る例が多数見られます。きょくとうによる店舗の事業取得も同じ流れと言えるでしょう。とはいえ、市場規模が縮小していることので大手企業も安泰ではありません。
打開策として他事業への参入があげられますが、クリーニング業界では難しいでしょう。既存のリソースを活用した業態転換ができないためです。実際に目立った他事業への参入例も見られないようです(M&Aキャピタルパートナーズ調べ)。今後、クリーニング業界では大手間の競争が激しくなり、一部企業による寡占化が進むと思われます。
<TEXT/経済ライター 山口伸 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>