コロナ前から赤字だった「白洋舎」。苦境のクリーニング業界の懐事情
観光需要の激減が響いたレンタル事業
翌2020/12期は売上が大幅に減収し、赤字額は増大。コロナ禍の外出自粛によって普段着とスーツのクリーニング需要が減少したことに加え、ホテル・レストランの営業時間短縮・休業によってレンタル需要が減少したことに起因します。
主要2事業の売上高はクリーニング事業185億円(前年比▲19.4%)、レンタル事業174億円(同▲26.9%)といずれも前年比で大幅に悪化していることがわかります。2021/12期は引き続きコロナ禍の影響を受けた形です。テレワークの定着によってスーツのクリーニング需要が減少し、クリーニング事業の売上高は前年比でさらに減少しました。
レンタル事業に関しては、相次ぐ緊急事態宣言の発令や得意先ホテルの稼働率低下が影響し、こちらも前年比で減収となっています。全社で約40億円の減収したとはいえ、人件費・賃料の削減や工場拠点の集約による経費削減が功を奏し、赤字額を抑えることができました。
こうしてみると、白洋舎は長期トレンドであるクリーニング需要の低下に苦しんでいるところに、コロナ禍が大打撃となって業績が悪化していることがわかります。コロナ終結以降は、依然クリーニング事業の縮小が予想されるため、レンタル事業でいかに伸ばせるかがカギとなるでしょう。インバウンドなど日本の観光産業の動向にも左右されそうです。
九州基盤のクリーニング「きょくとう」
「きょくとう」は福岡県に本社を置くクリーニングチェーンです。馴染みのない人も、多いかもしれませんが、営業所は500か所を超え、東京にも店舗を展開。白洋舎とは違い、消費者向けのクリーニング事業を主事業としています。2019/2期~2022/2期の業績は以下の通りです。
【きょくとう業績(19/2期→22/2期)】
売上高:66.8億円→66.2億円→48.8億円→45.8億円
営業利益:2.2億円→0.8億円→▲6.2億円→▲4.4億円
最終利益:1.2億円→0.5億円→▲7.6億円→▲2.0億円
2020/2期の業績は天候の影響がでているようです。事業取得によって関東の店舗数を増やしたほか、「スニーカークリーニング」などの新サービスを提供し始めましたが、暖冬によってコート類の持ち込みが減少したうえ、台風の影響で店舗への持ち込みが減ったことにより、前年比とほぼ同じ売上高に落ち着きました。利益面では不採算店の閉鎖や一時的な人件費の増加が影響し、減益となりました。