伝説の一戦がふたたび…頂点に立ち続けることの苦悩に迫る注目作
スポーツ界だけでなく、ビジネス界でも、誰もが1番を目指そうとするものですが、本当の苦しみがはじまるのは頂点に立ったあと。
その場に君臨し続けるための計り知れないプレッシャーや不安、孤独といかにして折り合いをつけられるかが、どの世界でも“王者”になるために欠かせないことなのかもしれません。
俳優陣のリアルな役作りに注目
常人ではなかなか味わうことのない苦悩に迫り、体感できるのが本作の見どころでもありますが、そんな心の機敏を見事に再現したのが、北欧の注目株スベリン・グドナソン。
今回、ボルグの外見と内面を5か月にわたって研究し、役作りに挑んだそう。また、2019年に公開予定の『ドラゴン・タトゥーの女』の続編では、これまでダニエル・ クレイグが演じたミカエル役を演じることが決定しているだけに、今後ハリウッドでもますますの活躍が期待されている俳優です。
対するマッケンローには、グドナソンと同じくハマり役と言われているシャイア・ラブーフ。飲酒運転や迷惑行為、暴行など、たびたび警察のお世話になっているハリウッドきっての“暴れん坊”だけに、試合中に悪態をつくマッケンローの姿はリアルそのもの。
俳優としての実力は申し分ないだけに、今回もまるで本人が憑依したかのような演技には思わず魅了されてしまいます。
魂の闘いに心が震える
“氷の男”ボルグと“炎の男”マッケンローという正反対に見える2人も、実は似た者同士であることがわかりますが、同じ目標へと向かう彼らがそれぞれどのようなアプローチで成功へと向かっていくのかを見るのはなんとも興味深いところ。
さらに、メンターともいえるコーチとの出会いや支える家族の存在の大きさも実感するはずです。
そんな風にボルグとマッケンローの人物像に深く迫り、観客の心をつかんでいる本作ですが、見逃せないのは迫力のテニスシーン。選手目線にはじまり、観客目線、実況席目線といったあらゆる角度から伝説の一戦を観戦することができ、まるで当時にタイムスリップしたかのような臨場感も味わわせてくれます。
ただ、球を打ち合うだけではなく、魂を削るような攻防にテニスファンならずとも引き込まれてしまいます。
頂点に居続けることの苦しみと葛藤がある一方で、頂上からしか見えない景色があるのも確か。自分の決めた道でトップを目指す意欲があるならば、ぜひこの感覚を体感してもらいたい。
<TEXT/志村昌美>
【公開情報】
『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』はTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中
配給:ギャガ