出版不況のなかで「老舗書店」が手掛けるディープなYouTube番組の舞台裏
雑誌の休刊、地方の老舗書店の閉店といったニュースが相次ぐ。書店調査会社のアルメディアによると、全国の書店数は、2000年の2万1654店舗から2020年には1万1024舗まで減少している。
2019年にCOREDO室町テラスにオープンした「誠品生活日本橋」を運営する有隣堂は、1909年の創業から現在まで、神奈川県を中心として東京や千葉に40店舗を展開している老舗書店だ。前回の記事では、その店舗スタッフにおすすめの文房具を聞いた。
有隣堂のYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」では、新しい切り口での文具の紹介や、ガラスペンなど特殊な文具の特集、作家・中山七里さんを迎えての「職業作家の1日ルーティーン」など、さまざまなコンテンツが楽しめる。老舗書店がどうしてYouTubeへ乗り出したのか。その経緯や動画制作の裏話まで、株式会社有隣堂広報担当・市川紀子さんに話を聞いた。
「有隣堂しか知らない世界」とは?
――書店がYouTubeチャンネルを始めるというのは珍しいことだと思いますが、どのような経緯でスタートしたのでしょうか。
市川紀子(以下、市川):出版不況などもあり、現在、書店の売り上げというのは右肩下がりです。そんな状況を受け、弊社の社長の発案で「新しい試み」として有隣堂のYouTubeチャンネルが始まりました。
――いくつかの動画はその時期に作られたものでしょうか?
市川:そうですね。あの時は運営側も試行錯誤していた時期でした。「外からの目線が入ることで良くなるのでは」という意見が出たことをきっかけに外部のプロデューサーに仕事を依頼し、2020年6月から現在の「有隣堂しか知らない世界」がスタートしました。
チャンネル名は「某人気番組から着想」
――初回でキムワイプが出てきたのには驚きました。文具ではないんだ!と。
市川:初回でキムワイプを紹介したのは「普通に文具の紹介をするのはアイディアとして弱い」というプロデューサーの判断からでした。意外性があったためか予想よりも多くの反応があり、大変ありがたいことにコメントもたくさんいただけましたね。
――ちなみに、Youtubeのチャンネル名については……?
市川:某人気番組から着想を得ております。