ウクライナ侵攻で「株価急落」の背景。コツコツ貯めた投資信託も売るべきか
基本姿勢は価格を気にせずコツコツ買い
損失受容度合いのことを、リスク許容度といいます。どれくらいお金を増やしたいか、反対にどれくらいお金を減らしても気持ちが耐えられるかと言い換えてもいいでしょう。
リスク許容度が高い人は、ロシアのウクライナ侵攻にも動じずに「長い目で見ればこんなこともあるかな」と受け止めることができるでしょう。リスク許容度の低い人は「こんなに値下がりするならやらなきゃよかった、早く投資をやめたい」と考えているかもしれません。
株式市場は、値上がりはゆっくりですが、値下がりは急に進みます。ですから、気がついたときには投資資金が10%以上減っていたという事態になっている人もいるでしょう。実際に、株式市場の値下がりをまったく知らない個人投資家が、筆者の周りにはいて、日々の価格変動は気にもとめていない様子です。
iDeCoやつみたてNISAの場合は、株式市場の急落がわかったとしても、保有銘柄をすぐに手放すことは難しい場合があります。例えば、個別の株式や株式指数は時々刻々と価格が変化しますが、投資信託の値付けは1日1回です。相場が下がって売りたいと考え、実際に売り注文を出しても、タイミングよく売れるかどうかはわからないのです。
iDeCo、つみたてNISAはどうするべきか?
世界中の株式市場が下落した今回、あらためてiDeCoとつみたてNISAの違いが浮き彫りになったと言えます。iDeCoは金融機関ごとに投資できる銘柄が異なりますが、預金や保険などの元本確保型商品がラインナップされていることがほとんど。そして、運用途中ではスイッチングといって、投資した銘柄を売却して、他の銘柄を購入することができます。
今回のような事態であれば、ロシアによる侵攻が懸念された時点や価格が下がり始めたタイミングで、株式投資信託を売却して、預金に資金を避難させることができました。今後、争いが落ち着つくまで、積極的な投資を中断するという選択肢があるのです。状況が安定してから、株式市場の動向を見極めた上で再度投資し直すという方法があり得ます。
一方のつみたてNISAは、長期投資に向いている銘柄のみ厳選されていますが、株式市場の値下がりに強い銘柄はありません。そして、保有している銘柄を売却すれば、投資した額に応じた非課税枠を失うことになります。つまり、iDeCoのようにスイッチングを行うことができず、投資から撤退するか、価格の下落を受け入れて将来の値上がりに期待するかの二択になるのです。
10年後、20年後に、あのとき投資をやめないで良かったと思えるか、あのときに投資をやめておけば良かった、と思うのか誰にもわかりません。元本が減っていても気にならない程度の金額であれば、今のまま積立を継続すればいいでしょうし、まとまった金額になっていて、値下がりが気になるようであれば、スイッチングや売却が選択肢になります。