急増する「発達障害グレーゾーン」。不注意やミスの先にある出口
15年で約2倍に…ADHD急増の謎
不注意なミスや片づけ、スケジュールや時間管理ができなくて悩んでいる人が増えている。そうした状態は、しばしばADHDと診断され、薬での治療をすすめられることも多い。
ADHDの有病率は、いまや1割にも達する勢いである。薬を処方された人の数から推測すると、15年でほぼ2倍くらいに増えているペースである。増加の原因は、認識が広まり、自ら受診するケースが増えたことが、1つの大きな要因と考えられているが、それだけでは説明がつかない現象もあり、実際に増えていると考える専門家が多い。そもそも遺伝要因が6、7割とされるADHDがどうして急増するのだろうか。
それに対する答えはいくつか考えられるが、環境要因が関係していることは間違いない。環境要因には、睡眠時間の短縮化やストレスの増加もあるだろう。また、合成甘味料や着色料、妊娠中の飲酒、虐待、生活困難家庭の増加なども挙げられる。
疑似ADHDかもしれない
そして、それとも関係するのが、疑似ADHDの増加である。疑似ADHDとは、症状がADHDと似ているものの、原因がほかの精神疾患、うつや不安障害、依存症、愛着障害などによって引き起こされるものだ。子どものADHDが、年齢が上がるにつれて改善し、18歳までに約8割が診断から外れてしまうのに対して、疑似ADHDは12歳以降にはじまることも多く、次第に強まっていく。
したがって、大人のADHDの多くは疑似ADHDということになる。疑似ADHDは、神経障害の程度は軽度であるにもかかわらず、本人の生きづらさや生活での困難はむしろ深刻であるという特徴がある。疑似ADHDのケースでは、気分障害、不安障害、依存症、過食症など、数多くの病名が並ぶことも多く、その根底に愛着障害や愛着トラウマを抱えていることも多い。
安易にスクリーニング検査だけでADHDと診断されることもあり、過剰診断が問題になっている。スクリーニング検査だけで診断された場合、約半分は過剰診断による疑似ADHDだと推測される。間違った診断のもと、投薬が行われないためにも、医療を受ける側も知識をもつ必要がある。
疑似ADHDかどうかの鑑別点のひとつは、多動・衝動性、不注意の症状が、12歳までに始まっていて、年齢とともに少しずつましになる傾向があるのか、それとも、12歳以降に目立つようになり、むしろ年齢とともにきつくなっているのかという点だ。また、うつなどの気分障害や不安症、何らかの依存、過食、解離などの症状をともなっていないかも重要だ。これらの症状がある場合、とくに複数ある場合は、疑似ADHDの可能性が高くなる。