急増する「発達障害グレーゾーン」。不注意やミスの先にある出口
対人関係から生きづらさを感じがちな人々が増えている。発達障害かもしれないと医療機関を訪れる人も多いという。そんななか最近注目されているのが、徴候はあるものの診断には至らない「グレーゾーン」だ。
精神科医の岡田尊司氏の著書『発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法』(SB新書)では、タイプ別に発達障害未満の生きづらさの傾向とその対策について解説。
今回はミスを連発したり、何でもすぐに飽きてしまう「ADHD」について紹介する(以下、同書より一部編集のうえ抜粋)。
不注意やミスの背景にある実行機能の問題
脳の司令塔のような役割を担っている領域が、額の奥にある前頭前野である。前頭前野は、現在の情報だけでなく、蓄えられた記憶からの情報も参照にしながら、リスクと報酬を考慮し、意思決定(目的の選択)を行うと同時に、目的達成のためにどのように行動するか、段取りを考え、プランを立てる(プランニング)。そして、そのプランに基づいて、実際に行動(課題処理)を行っていく。
情報に基づいて意思決定し、課題を遂行する機能を「実行機能(遂行機能)」と呼び、日常生活においても、仕事においても、対人関係においても、大変重要な役割を担っている。
実行機能の低下した状態で、よく知られているものがADHD(注意欠如・多動症障害)だ。ADHDでは、不注意、多動・衝動性のために、ミスを連発したり、1つの課題にすぐに飽きてしまってほかのことに手を出してしまったり、時間が管理できず、課題の期限が守れなかったりということが起きる。
不注意の問題=「即ADHD」ではない
さらに、課題遂行の面だけでなく、その前段階の意思決定において、そもそも失敗してしまうことも多い。誰かに駆け寄ろうとして車にひかれそうになったり、ふと出来心で投資をして大金をすってしまったり、予定外の買いものをしすぎて自己破産に至るというケースでも、コントロールできない衝動性が失敗を招いていることが多い。
プランニングも弱いため、場当たり的に行動をはじめてしまい、あとでやり直さなければならないということも起きる。説明書も読まずに家具を組み立てて、もう一度分解しないといけなくなるというような失敗をする方は、プランニングが弱く、衝動的に行動しやすいと言える。
ただ、不注意や衝動性の問題があるからといって、即ADHDというわけではない。実行機能の低下を引き起こし、不注意や衝動性の問題を生み出す原因はほかにもたくさんあるからだ(とくに青年・成人期の場合は)。