坂東龍汰が「不安だった」トランスジェンダー役に思う「美しい愛を描いている」
集中して進められた一発撮り
――演じるという意味では、感情に任せるのは難しい面もありませんか?
坂東:あのシーンに関しては、どう見えたいとか、見せたいとか、どう映っているとかもうどうでもよくて、それよりもそこで真也が感じている気持ち、伝えたい気持ちを丁寧に出すことが大事でした。あれは一発撮りだったんです。
――そうなんですね!
坂東:実は当時のことがあまり記憶になくて。実際に完成したものを映画館で観たときに、「ああ、こういうシーンになっていたんだ」と。監督の演出方法もすごいし、松永さんも素晴らしかったです。3人がそこまでの撮影で掴んで来た、それぞれの役の感情をしっかり映し出せていて感動しました。
高校卒業まで受けてきた教育
――坂東さんは高校卒業までシュタイナー教育を受けてきました。高校時代にはニュージーランドへの留学経験もあります。LGBTQについては、あまり意識することなく身近な存在でした?
坂東:そうですね。周りにも結構いましたし、小さな頃からずっと一緒だった友達にも、中学生くらいのころかな、ゲイだということは聞きました。偏見とか差別みたいなものは、うちの学校では感じなくて、特別な存在だとも思っていなかったので、むしろこの作品を通して、そうした差別や偏見があることを知って、すごく残念な気持ちになりました。
――シュタイナーは個人を尊重する教育ですね。
坂東:カテゴライズしたり、人を点数で評価したり、何かをできるできないで評価したり、優劣を決めない場所でした。自分はもちろん大切だし、同様に他者も大切にする。デビューしてから5年が経ちますが、今でも高校卒業までに築いた価値観みたいなものが残っていて、その思考で生きていると感じます。そこは変える気もないですし、根本の人間性として、役者があまり外に見せることのない部分は、幼少期に経験したことから成り立っているのかなと思います。
――見せることのない部分?
坂東:こうしたインタビューでもあまり言わない部分、これからも自分のなかに秘めて置いておくだろう自分の根幹の部分ですね。