大手が続々参入する「メタバース」をイチから解説。未来の100兆円市場の可能性
ソーシャルな活動から新たな価値が生まれてくる
NFTの普及がメタバース市場の拡大に寄与しているという見方もある。一方で、黎明期からメタバースに関わってきた人々は、投機マネーが集まる流れを静観している。2007年頃に日本でもブームとなったメタバースの先駆けである「セカンドライフ」の研究者で、デジタルハリウッド大学院教授の三淵啓自氏が話す。
「今、起きているNFT系メタバースの流れは、NFTによって希少性を付与することで、資本主義経済のモデルを持ち込もうというもの。それによって人々が集まれば、メタバースの発展に寄与するとは思います。ただ、大企業がモノやサービスを売って利益を上げることはメタバースの本質ではなく、人間同士のやり取り、ソーシャルな活動から新たな価値が生まれてくるのがメタバースです」
メタバースの世界では人間性が評価される
アバター同士のコミュニケーションでは、居住場所、ジェンダーやルッキズム、老いといった現実のコミュニケーションを困難にしている諸問題はほぼ解消される。翻訳機能が進化すれば、言語の壁も解消されるかもしれない。そうなれば、例えば、こんなビジネスが成り立つようになると三淵氏はいう。
「メタバースによって濃密なコミュニケーションが実現すれば、人間性が評価されるようになる。人々の気持ちを汲むメンター的な役割のニーズが増え、相手の話をきちんと聞けることも価値を生む。たとえば引退した銀座のママが綺麗なアバターで出てきて楽しい時間を過ごせれば、相当な対価を支払う人もいるでしょう。
また、クリエイティブな人にとっては自己表現ができてそれが仕事にもなる。資本がなくても洋服屋でもケーキ屋でも、好きなことができるのです。そういったことが気軽にできて市場が世界規模となれば、ただ与えられたものを買うだけでない、プロデューサー(生産者)とコンシューマー(消費者)が一体化した“プロシューマー”の時代になっていくと思います」