IT嫌いのオーナー社長を説得するには?社内政治に必須「根回し」のコツ
根回しの「やってはいけない」
意外に思われるかもしれませんが、根回しの順番は「分母(現場への根回し)」が先です。現場の方々の信頼を得るには、時間がかかるからです。逆に、自分を大事にせず無視されていると思われたら最後。嫌われるのは一瞬です。
正式に上に話す前に、「こういうことやろうと思うんだけどどう? 一緒にやらない?」と軽く話しておくのもいいでしょう。「この仕事を進めるにはあなたの力が必要」とお願いして、相手の自尊心をくすぐるのも効果的です。相手の興味関心を引き出し、当事者意識を醸成することがポイントです。
ただし、根回しが必要な時だけ声をかけるようでは、「自分の得になる時にしか動かないやつだ」と見透かされてしまいます。普段から意見交換や情報交換、あるいは雑談などで関係を作っておくようにしましょう。「最近どう?」のような一言でも、十分効果があります。
コロナ禍によりリモート勤務も増えている昨今、チャット機能などをうまく使うことも重要です。ただし、注意したいのは、上への根回しが十分でない状況で、メールやチャットの文章で根回しをしないことです。文章になると、「切り取られて」拡散されるリスクがあるからです。
提案の中身や重要なことはZoomやMicrosoft Teams(チームズ)などのオンライン会議ツールを活用し、デジタル上に証拠が残らないようにするのが得策です。
日常のルーティンで現場の信頼を勝ちとる
最近、会社でリーダーに求められる要件が大きく変わってきています。今までは成果を上げ、上司の覚えがいい人がリーダーになってきました。しかし今は、「この人についていきたい」と部下や後輩、あるいは事務スタッフの人から評価される人がリーダーになるのです。では、彼らの信頼を勝ち得るのはどうすればいいのか。それぞれの役割を尊重した対応を一貫して取ることです。具体的には、以下のようなことです。
・書類など提出納期は必ず守る
・上から目線で物事を頼まない
・「ありがとう」を声と形にして表す
経費の精算など、直接売上につながらないからと後回しにすることは、もってのほかです。「バックオフィスは直接的な利益を上げない」と軽視する姿勢は、一発で見抜かれ、嫌われます。なるべくミスも減らしたいところです。書類の不備やミスはバックオフィスの仕事を大いに妨げます。
周りはあなたのことをよく見ています。自分より立場が弱そうな人に強く、立場が上の人には弱い態度を取る人が一番信頼されません。時には普段のお礼として差し入れをするのも効果的です。遠方に出張に出た時はご当地のお土産を買ってきてもいいでしょう。値段は安くていいのである程度日持ちして一人ひとりに配れるものが万能です。
「そんな小さなことで?」と思われるかもしれませんが、実際にはこうした小さな積み重ねと、終始一貫した態度が信頼を生み出すのです。根回しの分母を増やし、競争するより協力するのが一番の早道です。
<TEXT/松本利明 人事戦略コンサルタント>