つくばと京都「東西の電気街」が相次いで消滅。“つくば消滅”には3つの要因が
つくば・秋葉原をつなぐ「つくばエクスプレス開通」
3つめの要因として挙げられるのが「つくばエクスプレスの開通」だ。
つくばエクスプレス開通前夜の1990年代、当時大手家電量販店であった「石丸電気」は、つくば電気街にあった石丸電気つくば店の近隣に小型の専門店を集積させるかたちで「未来電気街」の形成をめざした。
例えば、1998年4月には撤退したコナン販売の建物を賃借し、CDなどを販売する「ソフト館(のちミュージックプラザに改称)」を開設。2002年に閉鎖したC-YOU跡(旧ダイイチ跡)には2003年にデジカメやDVDなどを販売する「SUPERデジタル館」「DVDレンタル館」を開設した。
この石丸電気の「旗艦店の近隣に衛星店舗を集積させることで大きな集客を呼ぶ」という手法は、秋葉原の本店周辺でも採られており、同社にとってつくば電気街は秋葉原と並ぶほど重要な地であったことが分かる。積極的な拡大政策を採った石丸電気は2000年ごろにはつくば電気街の覇権を握ることとなり、ヤマダ電機などの「北関東YKK」とも激しい戦いを繰り広げた。
石丸にとって「ダブルショック」だった
しかし、奢れるものも久しからず。石丸電気も他の秋葉原系家電量販店と同様に「終焉の時」が刻一刻と迫っていた。そのきっかけの1つとなったのが「つくばエクスプレスの開通」だ。2005年に開通したつくばエクスプレスは、つくば駅と秋葉原駅を最短45分で結ぶ。これにより、日本一の電気街・秋葉原へのアクセスが大幅に改善され、より専門的な商品も気軽に手に入るようになった。
1990年代にはつくば以外でも「北関東YKK」に対抗すべく店舗規模の拡大をおこなっていた石丸電気であったが、郊外展開の遅れに加えて、旗艦店である「本店」も間接的につくばエクスプレスの影響を受けることとなる。
2001年に、つくばエクスプレスの建設に合わせて同線秋葉原駅前で行われる再開発の核が「ヨドバシカメラ」となることが決定。つくばエクスプレス開通に合わせ2005年9月に駅直結の都内最大級の複合家電量販店「ヨドバシAKIBA」が開業した。このヨドバシカメラは店舗面積33,000平米の巨漢店で、それゆえ「秋葉原の人の流れを変えた」といわれるほど周辺店舗に大きな影響を与えることとなった。
石丸電気本店もヨドバシカメラから徒歩圏であり、競争激化により旗艦店も不振に陥った石丸電気は2006年7月に「エディオン」(大阪市北区)と業務提携、2009年2月に吸収合併され、法人が解散するに至った。