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会社の同期との競争で悩んだら「バルス」せずに「ラピュタ力」を磨こう!<常見陽平>

学び

 書いていてツラくなってきたが、それ以降もなかなか苦しかった。

 同期たちが営業で良い成績を残して表彰されたり、起業したり、スカウトされて転職したり、早く昇進・昇格したり、華々しい仕事の担当に抜擢されたりと、まあ、いろんなドラマがあった。そのたびに「俺なんて……」と思っているのが私である。

 古巣もいまや上場し、立派な大企業になった。HPをたまに覗くと、やはり同期が出世していて圧倒される。特に今年は、国内統括会社の社長に同期が就任するというニュースがあった。「わあ、みんなスゴイのね」と思ったりする。

 自分は相変わらず根無し草のような生活をしている。言ってみれば、私は『天空の城ラピュタ』のようなものだった。毎日が「バルス」であり、同期の中ではプカプカと浮いていた。

 しかも、独身寮に住んでいたので、帰宅してからも会社の人だらけだったのだ。

 隣がまさに同期だったのだが、どうやら私は電話の声などがうるさかったらしく、何度もクレームがきた。「人事に言いつけてやる」くらいのことを言われた。「だったら壁の薄い独身寮に住むんじゃねえ」くらいのことを言いたくなったが、ぐっとこらえた。居場所なんて、なかった。

同期で悩む20代は「ラピュタ力」を鍛えろ!

天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎 Soundtrack(レーベル:徳間ジャパンコミュニケーションズ)

 まあ、それでも入社時に110人前後いた同期のうち、10人くらいとは今も交流がある。とくに、同じ物書き業界にいる、育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささんとは、2度共著を書き、何度か一緒にイベントもした。よく意見交換もしている。

 ニューヨーク在住で、グラミー賞にノミネートされたこともあるアーティスト宮嶋みぎわさんとは、帰国した際にたまに食事をしたり、SNS上でじゃれあったりする。他にも何人か、定期的にやりとりをする人がいる。

 ここまで読んでくれてありがとう。言いたいことはただひとつ。会社の同期とは無理に同期するなということだ。仲良くなるべき人とは自然に仲良くなるし、そうじゃない人とは一定の距離はあるし。それでも死なない。あと、それぞれの人生を歩んでいるので、人生の疑似体験をするという意味では楽しい。

 まあ、でも、頑張っていると、いや、ちゃんと生きていれば誰かが見ているから大丈夫。ああ、そうか、同期にこんなにすごいヤツがいるんだ、と思いつつ。いまだに、Facebookで「同期飲み」なるものをたまに発見し、呼ばれていない自分を再確認したりするのだが。「浮く」というのも、「その他大勢」から抜け出すためのポイントだ。

 というわけで、まったく悩み相談になっていないようで、同期との社内競争に負けても、同期内の飲みに誘われなくても、幸せに生きることはできるから、会社の同期の件でいちいち勝ち負けを感じたり、傷ついたりしてはいけないのだ。ラピュタ力を磨こう。バルス!

<TEXT/常見陽平>

働き方評論家。千葉商科大学国際教養学部准教授。1974年、北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学院社会学研究科修士課程修了。『社畜上等!――会社で楽しく生きるには』など著書多数
■Twitter:@yoheitsunemi

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