テレワーク特需の「PC周辺機器メーカー」大手2社で業績が対照的なワケ
今期は両社とも一服感で苦しむ
近年の業績はエレコムが好調、アイ・オー・データが軟調といったところですが、今期は両社ともやや苦しんでいるようです。エレコムの2022/3期2Q成績は売上高が2.5%しか伸びず、一方の営業利益は7%も減少しました。
テレワーク需要が一服したことや、文科省が主体で小中学校へのPC普及を目指す「GIGAスクール構想」関連の需要が伸び悩んだことが影響しているようです。何より世界的な半導体不足の影響が大きく、新商品の納入遅れや在庫の不足が減収に寄与しました。そのうえ供給不足によって半導体価格が上昇しているため、これが今期利益の減益につながりました。
アイ・オー・データも2022/6期1Qは売上高が1%しか伸びず、営業利益も昨年同期の4.2億円から▲2.9億円と赤字に転落しました。エレコム同様、テレワーク需要の一服が影響しメモリ・ストレージ類や周辺機器の売れ行きが伸び悩みました。
液晶関連は4Kモニターや企業向け製品が堅調で売上が15%も増加しましたが、他製品の減少を補えなかったようです。テレワークの縮小や廃止を検討する企業も現れており、需要は一巡したと見てよいでしょう。株価は両社とも今年に入ってから下落し続けています。
新規事業展開も対照的
今後に関してエレコムは国内ECの強化や、EC・マーケティングを駆使した海外向け強化を実施すると発表しており、この点は事業拡大に期待ができます。また、新たな事業分野を開拓するため、監視カメラ事業の強化やM&Aを通じた新規参入にも取り組むようです。
一方のアイ・オー・データはゲーム分野の好調や教育分野のICT化に伴う需要増加を見込んでおり、同分野向け製品を強化するとしています。ただし液晶や端末機器など製品自体は既存製品の延長に過ぎず、新規分野への参入は予定していないようです。
コロナ後もビジネス・行政・ゲームの各分野でICT化(高度情報化)は進むかもしれませんが、長期では国内市場の縮小や海外勢のシェア拡大がネックとなります。将来どちらが成長を続けそうかと問われれば、今のところはエレコムといえそうです。
<TEXT/経済ライター 山口伸>