1人の少年が生んだ「パワースポットブーム」の功罪。数時間待ちの行列スポットも
美内すずえ、細野晴臣らが紹介、ブームに
「パワースポット」という言葉自体は、それ以前からニューエイジや精神世界で使われており、国内では天河神社(天河大弁財天社)、海外では米国アリゾナ州のセドナ、カリフォルニア州のシャスタ山などが知られていました。
天河神社は毎年大祭に曲を奉納した音楽家の宮下富実夫(みやした・ふみお)や、遷宮大祭での奉納演奏に参加し中沢新一との対談でも取り上げた細野晴臣、『ガラスの仮面』で知られる少女漫画家の美内すずえ(『宇宙神霊記』で天河神社を紹介)、1991年に公開された内田康夫原作の映画「天河伝説殺人事件」によって有名になり、多くの若者が押し寄せる「テンカワブーム」を巻き起こしていました。
また、セドナやシャスタ山はホゼ・アグエイアスのハーモニック・コンバージェンス(地球を霊的進化のサイクルに向かわせるべく大勢の人が参加した大規模瞑想イベント)で集団瞑想が行われた場所です。
数時間待ちの行列ができるスポットも
精神世界のキーワードだったパワースポットはその後女性誌にも取り上げられ、スピリチュアル・ブームの中で江原啓之にも紹介されるようになります。
2009年には手相鑑定で知られる芸人、島田秀平(「号泣」の漫才を見ていた頃はまさか手相芸人になるとは思いませんでした)が明治神宮の清正井を紹介したことから、数時間待ちの行列ができるほどの人気スポットとなり、本格的なブームとなります。現在では癒しや観光の対象として定着していますね。
宗教学者の岡本亮輔『宗教と日本人』(中公新書)や堀江宗正(ほりえのりちか)『ポップ・スピリチュアリティ』(岩波書店)でも指摘されていますが、パワースポットが辿った歴史を見ると、時代が進むとともにカジュアル化と目的の直接化が進んでいることがわかります。