1人の少年が生んだ「パワースポットブーム」の功罪。数時間待ちの行列スポットも
今では当たり前のように使われている「パワースポット」という言葉。どこかの旅行会社や観光協会が地元PRのため作り出したものと思いがちだが、そうではない。実は、オカルトやニューエイジや精神世界から生まれた言葉なのだ。
オカルトブームから生まれた超能力少年の一人である清田益章という人物が1991年に出版した『発見!パワースポット』(太田出版)という本がある。これは「パワースポット」という言葉をタイトルに入れた最初の本であり、今でも多く見られるパワースポット本のはしりである。
この言葉はその後、スピリチュアルブームと共にカジュアル化し、女性誌でパワースポット特集が盛んに組まれたことから世に広まっていった。
オカルト・スピリチュアル・悪徳商法研究家でライターの雨宮純さん(@caffelover)が、パワースポットがいかに世の中で受け入れられていくか解説する(以下、雨宮純さん著『あなたを陰謀論者にする言葉』より一部編集のうえ、抜粋)
「パワースポット」本の先がけとなった一冊
今では観光スポットとして定着しているパワースポットも、もともとはニューエイジや精神世界から生まれたものです。
あまり知られていませんが、「パワースポット」をタイトルに入れた本を最初に刊行したのは超能力者として知られる清田益章(きよた・ますあき)です。彼はオカルトブームから生まれた超能力少年の一人で、1991年に太田出版から『発見!パワースポット』という書籍を刊行し、パワースポットの説明や分類、具体例を記載しています。
その際に取り上げられたパワースポットは栃木県の二荒山(ふたらさん)や神奈川県の大雄山最乗寺(だいゆうざんさいじょうじ)といった寺社から山梨県の精進湖(しょうじこ)や熊本県の阿蘇中岳といった自然スポット、東京の千住新橋や二重橋前まで多岐にわたります。
なぜパワースポットを紹介したのか?
清田はパワースポットを「地球が宇宙からエネルギーを取り入れているポイント」とし、風水の龍脈(りゅうみゃく。気が流れている経路)や龍穴(気が噴出しているポイント)、レイライン(地図上で古代遺跡を繫いでいるとされる直線)を裏づけにして説明しています。
この本の中には「ニューエイジ」という章があり、清田はニューエイジ・ムーブメントを「オレたちのムーブメント」としたうえで、パワースポットを紹介する理由を次のように説明します。
=====
結局“ニューエイジ・ムーブメント”っていうものは、現代という時代のなかで、精神的な渇きを感じる人たちが増えていて、そういった渇きを癒すための手段なんだってことだよね。そこでオレは、この渇きを癒すためにパワースポットというものを紹介するわけなんだ。
=====