衆院選で注目「ベーシックインカム」が困窮者を救う。生活保護では不十分なワケ
長期間のデフレに苦しむなか、新型コロナウィルスの登場により、日本経済は深刻な打撃を受けた。その結果として、困窮者はますます困窮し、貧困とは無縁だった人でさえ困窮者になるケースも珍しくない。
2020年に実施された10万円の一律現金給付を皮きりに、困窮者救済の打開策として“ベーシックインカム”(すべての国民に対して、一律に現金を給付する施策)が取り上げられる機会が増えた。実際、日本維新の会、れいわ新選組は導入に前向きの姿勢を見せ、衆院選の公約にもしている。しかし、各政党ともに給付額や財源には差異があり、正直言って非常にわかりにくい――。
ベーシックインカムの正しい在り方
各政党の提案する政策・制度に触れつつ、国民が豊かになるためのベーシックインカムの在り方について駒澤大学経済学部准教授の井上智洋氏(@tomo_monga)に話を聞いた。
2020年に実施された一律現金給付「特別定額給付金」について井上氏は“一時的なベーシックインカム”と位置付けられるという。
「ベーシックインカムは普通、国民全員に生活できるだけのお金を給付する“完全ベーシックインカム”ないし、“ユニバーサルベーシックインカム”を意味します。ただし、生活するには不十分な少額のお金を給付する“部分ベーシックインカム”など、ベーシックインカムっぽい政策は色々あります」
一律現金給付は「ベーシックインカム」ではない
結局は2020年に1度しか給付されなかったため、「一時的なベーシックインカム、もしくは“ベーシックインカムっぽい政策”という扱いになる」と位置付けた。
「社会保障制度や税制度の改革には実際、とてつもなく時間がかかります。それを待ってからベーシックインカム導入ということであれば、かなり遠い未来の話になってしまうのではないか」と井上氏は心配している。
ベーシックインカムの議論は、導入までのスピード感を重視しなければいけない。今回の選挙でも政党や候補者がベーシックインカム導入を主張する際、“なにを財源にするのか”は特に注目する必要がある。