習近平氏の「中国は世界的なロールモデルになる」は遠い夢。人民元は世界の基軸通貨になり得ない
中国は116兆円もの借金大国
この中国の外貨準備高と対外純資産の関係が何を意味するのか。簡単に言い換えると、輸出で稼いだドルが対外資産になり、そこから負債を引いたものが対外純資産だ。企業は輸出で稼いだドルの一部を売却して自国通貨に替えてから国内の支払いに充てるので、放っておけば自国通貨高になる。つまり、中国の場合はドル売り人民元買いによる「人民元高」になる。
そこで中央銀行が介入して自国通貨を売りドル買いをすることになり、その結果、外貨準備がたまることになるが、通常、外貨準備高が対外純資産を上回ることはない。しかし、中国の場合、2020年の外貨準備高が約348兆5170億円に対して、対外純資産は約232兆円となっており、外貨準備高が対外純資産を上回っているので、差額の約116兆5170億円は借金ということになる。
ちなみに日本の場合はというと、外貨準備高は約151兆円で対外純資産が約356兆9700億円であるから差額の約205兆9700億円は黒字だ。したがって中国は、実は大変な借金大国という話になる。その上、中国共産党の幹部や国営企業の経営者たちが、巨額の資産を海外に隠しているとも言われており、統計に出ていない資産の合計は何兆ドルにも上ると推測されている。
経済の実態を反映していない国
いずれにせよ、中国当局が発表する数字は、常にブラックボックスに隠れているので、経済の実態を反映していないだろうし、こうした国の通貨が世界の基軸通貨として機能するとは思えない。
そもそも基軸通貨を担保するものは、世界をリードする経済・軍事両面の圧倒的な国力だと言える。歴史を振り返れば、ローマ帝国もオスマン帝国も、パックスブリタニカと言われた大英帝国もそうであったし、現在のパックスアメリカーナも同様である。
この通貨は信頼が置ける、価値があると思うから多くの国々・地域が貿易決済の方法として使用しているわけで、いつの時代も最強の国の通貨が、世界の基軸通貨になるのは理の当然である。
<TEXT/エミン・ユルマズ(エコノミスト)>