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宮澤喜一にすら小馬鹿にされた…“戦後最も偉大な総理大臣”の不遇すぎる前半生

ビジネス

大東亜戦争開戦、そのとき池田は…

 そして、昭和十六年十二月八日の真珠湾攻撃によって、大東亜戦争開戦となります。

 その翌日、池田は大蔵省主税局国税課長となりました。大蔵大臣は賀屋興宣。賀屋はエリートながら人情にあふれた人です。現在も主計局のノンキャリアOBの親睦会で「七夕会」というのがあるそうですが、この会の発起人が賀屋です。縁の下の力持ちとして支えてくれているノンキャリアに報いようとの趣旨です(神一行『大蔵官僚』講談社、一九八二年、二六~二七頁)。

 賀屋は、本来は高橋是清「三羽烏」筆頭の自由主義者なのですが、戦時体制の中で自らの手で増税を行う羽目になりました。首相の東条英機に乞われて蔵相についたのですが、その条件の「アメリカと戦争をしないこと」は守られませんでした。

 東条も必死にアメリカとの和平を探ったのですが、事態がこじれすぎていたので約束を果たせず、開戦に至りました。戦いが始まってしまったら、大蔵省に選択肢はなく、戦費を調達するのみです。そして池田勇人もまた、臨時軍事費を捻出するため増税に励むことになります。

医師会の「ゼロコロナ」強要と同じ状況

池田勇人

広島県広島市にある池田勇人銅像

 戦前の大蔵省が軍部などよりよほど強かったことは前述の通りです。その大蔵省がなぜ戦争も軍拡も止められなかったか。

 令和三年の日本に生きている読者の皆様は、体感しているでしょう。陸軍の強さは、今の日本医師会と同じです。医師会や手先の分科会、厚労省など普段なら「ザコキャラ」ですが、コロナ禍のパニックのドサクサで、財務省を相手にやりたい放題です。今や無限に近い財政出動を迫られています。

 ちょうど陸軍が戦争終結に反対し続けたように、医師会もコロナ禍が終わってほしくないかのような言動を繰り返しています。今の医師会は政府に「ゼロコロナ」を強要していますが、戦時中の陸軍が「大東亜共栄圏」を絶叫していたのと同じです。絶対に実現不可能な理想を掲げてパニックを継続させる

 国民がパニックに陥れば、誰もその流れを変えられないのです。「戦争だ」=「コロナだ」と国民全員がパニックになっているときに、「軍拡だ」=「コロナ対策だ」に誰も逆らえない。今の財務省が医師会の主張にお手上げなのと同じ構図が、当時もありました。

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