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ワクチンパスポート導入に、なぜ賛否?米国では“接種拒否だとクビ”も現実に

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日本でもこれからは必需品に?

 米国では、ワクチン接種を希望しないために仕事をクビになった人や、スポーツ観戦場やコンサート会場などへ簡単に入れなくなっている人(ワクチンパスポートを持っていない人は、72時間以内のPCR検査で陰性を証明する必要がある)が増えていることを受けて、偽のワクチンパスポートが出現しているのも大きな社会問題となっている。

 外務省のサイトの「海外渡航用の新型コロナワクチン接種証明書が使用可能な国・地域一覧 」(2021年10月15日時点)を見ると、現在、入国するためにワクチンパスポートが必要な国は、米国をはじめ、カナダ、英国やイタリアやフランスなど欧州24か国、インドネシアやシンガポールなどアジア8か国、中東のオマーンなど3か国、アフリカのアンゴラなど2か国、エクアドルなど中南米8か国、サモアなど太洋州4か国、合計51か国となっている

 2021年8月19日付で筆者が配信した記事【ワクチン接種義務化で対立が進むアメリカ、「家族や友人間が分断」の背景】でも触れたが、「ワクチンパスポート取得者 vs. ワクチンパスポート未取得者」という米国民のあいだの対立は、今後も続くだろう。

米国は海外渡航者への規制を緩和へ

Vaccine

Vaccine passport on mobile phone app screen © Martinmark | Dreamstime.com

 世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は、「現時点(今年9月14日)では旅行の際にワクチンパスポートを必要とすることは支持しない。しかし、今後、各国でワクチン接種が進んできた場合は導入を検討するかもしれない」と表明している。理由は、ワクチンを接種していても他人への感染を防げるのか不透明なこと、ワクチン接種の格差や差別への懸念があるからだ。

 ちなみに、カリフォルニア州ではワクチンパスポートを導入する予定はないとしている。しかし、同州のサンフランシスコでは今年8月より、大勢が集まるイベント会場や屋内のレストランなどでワクチンの接種証明提示を義務付けている

 ロサンゼルスでは、依然、屋内に限りワクチン接種の有無にかかわらず常時マスク着用を義務付けており、今年11月より、スーパーマーケット以外の店やショッピングモール、屋内のレストラン、映画館やスポーツ観戦場などの娯楽施設へ入るためにはニューヨークやサンフランシスコと同様の対応をとることが決まっている。

 米国政府は、「ワクチンパスポートによって海外渡航者への規制を緩和する」としているが、これまで未接種で米国へ入国できていた日本人旅行者にとっては規制強化になってしまっており、ワクチンパスポートの迷走は今後も続きそうだ。世界的なワクチンパスポートの導入状況を注視していきたい。

<TEXT/藤本庸子 Yoko Fujimoto>

米国カリフォルニア州ロサンゼルス33年在住のフリーランスライター。雑誌「アンアン(anan)」「メンズクラブ(MEN’S CLUB)」などのライターを経て、米国へ移住。米国起業家向け雑誌トップの「Entrepreneur Magazine」にてスタッフライター、NHKラジオ第一放送「ラジオ深夜便」ワールドネットワークにてリポーターの経験も。現在、新聞、雑誌、ウエブサイト、ラジオ、テレビなど、さまざまな分野および媒体をこなす

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