コロナ禍で大学サークルが存続の危機に。飲み会、合宿も禁止で加入者激減
「主導できる上級生がいない」
100人規模の広告サークルに所属する3年生の剛さん(仮名・明治大)は、運営ノウハウの継承に頭を悩ませていた。
「学祭でステージショーを主催してきたのですが、主導できる上級生が誰もいないんです。2年生はコロナが落ち着いた昨年秋から入ったので1.5年生のような状態で、3年生はコロナ前を知っているとはいえ、当時1年生なのでノウハウまでわからない。それで今年も開催を断念しました。合宿も追いコンもできず、卒業生との縦のつながりも薄れました」
10月から緊急事態宣言が明けても、サークル活動の制限は続く。全国の主要大学30校を調べてみると、総じて施設利用や大会出場は申請制で、会食や合宿は禁止とされていた。サークルにとって一大イベントの学園祭も、東大や立教などは今年もオンライン開催を採用している。
「練習には大学に毎回届け出が必要で、人数は1回10人程度と制限されています。今年も学祭はオンラインなので、もう2年も人前でライブができていない。引き継ぎも不安です」(アカペラサークル・東工大2年生)
サークル規制の背景に社会の目と保護者の声
なぜ大学はここまで厳重な措置を講じるのか。都内某私立大学の学生課職員が、匿名を条件に大学側の事情を聞かせてくれた。
「大学施設で感染者が出てクラスター認定されると、施設が一定期間利用停止になる。それで授業に支障が出るのを一番懸念しています。そうなると世間からも叩かれますし、保護者からのサークル活動の禁止を求める声も多い。大学は世間や保護者が納得するようなリスクを最小限にした判断をしなくてはなりません。決してサークルを規制したいのではなく、感染拡大しない範囲で活動を守るルールなのです」
朝日新聞と河合塾が今年6~8月にかけて655大学(回答率85%)を対象に行った共同調査「ひらく 日本の大学」によると、各大学の学長が大きな課題と考えているのが「課外活動の実施」で73%と最も多かった。サークル活動が必要だと念頭にあっても、制限を続けざるを得ない苦悩が浮かぶ。