黒木華に聞く、人生で“先生”と呼べる人物「今でもふと浮かんだりします」
芝居は俯瞰で、日常生活はきちんと感じながら
――ひとりの女性であり、女優でもある黒木さんですが、日常生活で、つい演技に照らし合わせて見てしまうような職業病だと感じる瞬間はありますか?
黒木:たまにありますね。たとえばすごく怒っている人がいたら、「こういうことで怒るんだ」「こんな風に怒るんだ」とか思うことはあります。他にも、そのときはあまり意識していないことでも、お芝居で同じような境遇を演じる際に、「確かにこういうとき、こんな気持ちになったな」と以前のことを思い起こすことはありますね。
――実際にその経験に直面しているときに、感情を意識しているというより、演技の際に思い起こす?
黒木:そうですね。お芝居をしているときは、特に物事を俯瞰的に見るように意識しています。逆に、日常生活では、「今日は暖かいな」「花がキレイだな」「気分がいいな、なんでだろう」など、素直に、きちんと感じながら生きるように気を付けています。
恩師からの教え「伝わらなきゃ意味がない」
――黒木さんの人生で、先生と呼べる人を挙げるなら?
黒木:先生というイメージだと、高校のときのすごく厳しかった演劇部の先生ですね。
――言われたことで今でも覚えていることはありますか?
黒木:「観ている人より先に泣くな」「悦に入るな」と言われたことは、今でもふと浮かんだりします。「伝わらなきゃ意味がない」ともよく言われました。客観性を持つという意識は、高校時代の教えから続いていることかもしれません。
――映画デビューから10周年です。20代はこう過ごしてきたので、30代はこう過ごしていきたいといった思いはありますか?
黒木:20代はがむしゃらに頑張ったので、30代はもう少し楽に生きたいです。20代は、何かやらなきゃという気持ちに追い立てられたり、なんでできないんだろうといろんなことにイラだっていた気がします。特に20代後半は、こういうことがやりたいのに、なんでできないんだろうと。30代は「なんでできないんだろう」ではなくて、「こういうことやりたいな」「楽しいな」と思ってやれるように。余裕を持って過ごしたいです。
<取材・文・撮影/望月ふみ>