中国に押される日本のアニメ業界。過酷労働で人材流出が止まらない背景
海外で人気が爆発するケースも
永井豪原作の『鋼鉄ジーグ』がイタリアで人気となって、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』という映画まで公開されたように、あくまで日本市場向けに制作したものが、偶然にも他国で人気を博すというサイクルは昔からあった。が、意図して海外市場を視野に入れて作るようになったのは2000年代からだ。
2004年に放送された『キン肉マンII世 ULTIMATE MUSCLE』は、実は逆輸入作品であり「ULTIMATE MUSCLE」はアメリカで放送されていた『キン肉マン2世』の英題である。「キン肉マン」自体が海外では知名度が低く、試験的に放送してみたところ、アニメ版に関しては、日本より人気になってしまった。
『爆丸 バトルブローラーズ』も日本では、それほど人気がなく、関連商品もあまり売れなかったが、アメリカでは爆発的な人気となり、続編となる『爆丸 バトルブローラーズ ニューヴェストロイア』は、海外市場用に制作され、それが逆輸入で日本放送された。4作目『爆丸 バトルブローラーズ メクタニウムサージ』にいたっては、日本では放送すらもされていない。
『忍者ハットリくん』はインドで続編制作
インドで2004年から放送されていた『忍者ハットリくん』も、インド放送用としての続編が制作され、今も放送が続いている。近年では『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』も人気となっていて、2021年1~2月にかけて劇場版が6作連続公開された。
日本を代表する老舗玩具メーカーのバンダイでは、もともと「戦隊シリーズ」をリメイクした「パワーレンジャー」シリーズの商品を北米やアジアを中心に展開させてきていたが、近年ではマーベルやDC、映画キャラクターなど、海外ウケを狙った商品をアピール。海外市場は経営を支えるうえで、なくてならないものとなっている。
2021年2月、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の財団の傘下にあるゲーム会社EGDCが『サムライスピリッツ』『キング・オブ・ファイターズ』などで知られるSNKを買収。さらに同じくサウジアラビアにある、エンタメ制作会社マンガプロダンションズが東映と共同でアニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物』を制作し、日本でも公開された。
アニメ制作のアウトソーシングが目立ってきた頃から、いつかは日本のアニメ技術が盗まれたり、企業ごと買収される日が来るだろうと思われていたが、今がその真っ只中といえるのではないだろうか。