やがて老後の資金は自己責任に?今から知っておくべき「年金の真実」
年金の支給開始年齢の引き上げ
現在の年金の支給開始年齢は65歳とされています。今の形になっているのは平成12年に60歳から65歳までに支給開始年齢を引き上げることが決まり、企業にも年金の支給開始年齢である65歳まで雇用を確保することが義務付けられているのです。
さらに、2021年4月には高年齢者雇用安定法が改正され65歳までの雇用確保に加えて、70歳までの就業を確保することについて努力義務が課されたのです。そして、今後、この努力義務が義務化されることも十分に予想されます。
「人生100年」と言われているくらいですから、70歳までの就業義務化にあわせて年金の支給開始年齢も70歳に引き上げるという噂も現実味を帯びてくるというわけです。
30代のあなたは年金で暮らせるのか
公益財団法人生命保険文化センターのアンケート調査「生活保障に関する調査」で、ゆとりある老後にはいくら必要か?という問いに対して、旅行や趣味付き合いも踏まえると平均36.1万円必要だといわれています。
厚生労働省が公表している令和3年度のモデル世帯(夫40年就業、妻 専業主婦)の年金額は22万496円とされており現時点で14万円の乖離があるのです。
30代が年金を受給するのは当面先になり、そもそも年金がもらえるのかという点、もらえたとして年金で生活できるのかという点について最後に整理をしていきます。2004年の改正を踏まえて日本の年金制度のしくみからすると、
1:給与やモノの値段があがっても年金は同様に上がらないしくみができており、保険料収入などの財源の範囲内で給付を行うこととなっている。
2:5年に1度財政検証が行われ100年先を見通して調整するしくみをとっている。
3:支給開始年齢の引き上げも検討される可能性が十分にある。
これらのことから財源が破綻しないように年金額を下げるしくみや支給開始年齢の引き上げも検討されることも考えられることから、結果として年金が破綻することやもらえなくなるといったことはおそらくないでしょう。ただし、年金の額は減ってくることが想定されるため、年金のみの収入で生活していくことは厳しいといわざるを得ません。
また、人生100年時代といっても健康な体があってのみ働くことができるため企業が就業確保措置をとったとしても必ず働けるとはいえません。国がiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(個人投資家のための税制優遇制度)の普及に力を入れるのも、「今の現役世代は年金のみでの生活は厳しい」といったことを前提に、国民に対して自己責任で資産形成を行うよう暗に求めているといえなくもありません。
いずれにしてもiDeCoやNISAその他年金に頼らない資産形成を考えていく必要があるといえるでしょう。
<TEXT/特定社会保険労務士 土井裕介>