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世界遺産は増えすぎか?奄美大島、縄文遺跡群の登録に見る、その功罪

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2つの新たな世界遺産の登録の背景

 2021年は、前年未開催となった世界遺産委員会の分も含め、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」「北海道・北東北の縄文遺跡群」の2つが世界遺産に登録された。

 奄美・沖縄は、3年前の諮問(しもん)機関の調査で完全性(世界遺産の顕著な普遍的価値を構成するために必要な要素がすべてそろっている状態)などが不十分だとして、登録延期の勧告が出された。これを受けて推薦を取り下げ、翌年に世界遺産登録の範囲を拡大させ、十分な広さを確保したうえで再度推薦し、無事、登録となった。

 まず、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島について、宮澤氏の見解を聞いた。

「日本の自然遺産の場合、登録基準の9番(動植物の進化や発展、また独自の生態系を示している)に該当するものが多いのですが、奄美・沖縄に関しては認められずに、登録基準10番(絶滅危惧種の生息域を含み、生物の多様性を示している)での世界遺産登録となりました。

 なぜかというと、このあたりは、かつて大陸と陸続きだったこともあり、生態系は、このあたりの固有のものだけでなく、大陸にも似たような生態系が存在しているものがあるからです。その他の特徴としては、生態系の中で捕食者が少ない、外敵が少ないために、絶滅危惧種が淘汰されることなく現存し、多様性を残しているという点が評価されました」

北海道・北東北の縄文遺跡群登録のワケ

大船遺跡

大船遺跡(北海道・北東北の縄文遺跡群)

 続いて、北海道・北東北の縄文遺跡群の登録背景について。

「縄文時代の生活というと、一般的には、移動しながら狩りを行っているイメージがあると思います。しかし、今回登録された北海道・北東北の縄文遺跡群では、狩りを行いながら定住生活をしていることが明らかになりました

 世界的に見ると、定住生活は、農耕と結び付けられて考えられますが、この縄文遺跡群では、農耕が行われる前から、大規模集落が形成されていました。また、埋葬の慣習もあるなど、かなり文化レベルの高い生活をしていたと思われます」

 その背景として、遺跡群周辺に津軽海峡があり、ある一定の時期にサケやマスなど、獲物がたくさんやってくる時期があった。その獲物を捕るためには、少人数ではなく、大人数で狩りを行う必要があった、ことが挙げられる。

「発掘された骨を見てみると、外傷がないことが明らかになりました。これは、人間同士の争いが少なかったことを示しています。このような先史時代の大規模集落は世界的にも珍しく、世界遺産に登録されることになりました」

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