全国に2か所だけ。競走馬の調教施設がある村での生活とは
茨城県美浦村に住む小沢優(仮名・23歳)さんは、日常生活で馬の存在を感じることが多いと言います。近所の公道で人が乗った状態の馬がパカパカと歩いているのを見かけたり、朝の4~5時ごろに馬の鳴き声が聞こえてくるのも日常茶飯事です。
なぜ小沢さんの近所には馬が多いのか。その理由は彼の家から1キロほど離れた場所に、競走馬の調教施設「美浦トレーニングセンター」があるからです。トレセンには2000頭以上もの競走馬が収容可能で、常にレースに備えて在厩(ざいきゅう)している馬が数多くいます。
2000頭以上の競走馬を収容する施設がある村
小沢さんが小学生の頃は通学路でトレセンを通っていたため、ほぼ毎日馬を見ていました。なにせ2000頭以上もの馬を収容できる大きい施設なので、トレセンの外を周ると登下校に時間がかかります。そこで近道としてトレセン内を突っ切る形でこっそり登下校していたそうです。
大規模な調教施設がある美浦村だからこそ、学校の同級生では乗馬をしている人も少なからずいました。
「サッカーやバスケをいったメジャーなスポーツと同じぐらい乗馬に親しむ人が多かったですね。馬がたくさんいる環境を十二分に活かして、美浦村では未来のジョッキーを育てようとする文化も感じられました。授業の一環でトレセン内を見学したりすることもありました。馬が周回しながら走ったり、プールのなかで泳いでいる光景が見れました」
同級生の父親は有名な現役ジョッキー
中央競馬に登録されている馬のすべては、美浦と滋賀にある「栗東(りっとう)トレーニングセンター」の2か所に所属しています。競走馬を訓練している数少ない地域だからこそ、美浦村の住人には競馬関係者や、それを志す人が多く集まるのです。
高校にはトレセンに就職したいがために、わざわざ美浦村に引っ越してきたという同級生もいたとか。
ちなみに小沢さんの祖父も昔、地方競馬所属のジョッキー。トレセン内は一般人は入れないものの、祖父が競馬関係者だったため、小学校の頃トレセン内を通って登下校できたというわけです。
小沢さんのように親族がジョッキーや調教師だった人は多く、小沢さんが通っていた学校の生徒には現役で活躍している、柴田善臣騎手の息子もいました。トレセン付近を歩いていると、有名なジョッキーを目撃するのは日常茶飯事です。