経営危機のワタベウェディング、「キャベジン」の興和に身売りした理由
2021年3月、結婚式場運営のワタベウェディングが事業再生ADRを申請しました。事業再生ADRとは、売上の急減などが原因で債務の返済が困難になり、債権者に対して返済の一時停止や減免を要請するものです。これは自主再建を断念したことを意味します。窮地に陥ったワタベウェディングの救世主として名乗りを上げたのが「キャベジンコーワ」や「ウナコーワ」でお馴染みの興和でした。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内のブライダル企業の多くは、コロナ前比で売上高6割減を強いられています。なぜ、各社苦戦している中でワタベウェディングだけが借金を返せないまでに追い込まれたのでしょうか? そして、興和がスポンサーとして名乗りを上げた理由はどこにあるのでしょうか?
この記事ではワタベウェディングの事業構造を解説しながら、その理由に迫ります。
若者の支持を得ていた「リゾート婚」
ワタベウェディングはリゾート婚の先駆けとなった会社。ハワイやグアム、沖縄などのリゾート地での結婚式を多く扱っていました。ホテルやゲストハウスでの400万円を超える高額な結婚式が敬遠されるようになったことで、リゾート婚は人気がありました。特にお金に余裕がない若いカップルにとって、ハネムーンが満喫でき、少人数の仲間に囲まれて結婚式ができるリゾート婚は合理的な選択だったといえます。
ワタベウェディングは2009年に「リゾ婚しましょ。」というキャッチフレーズで全国にテレビCMを放映しています。この分野に力を入れていたことが、新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けた一番の要因です。
どれほどリゾート婚に依存していたか見てみましょう。ここでは、コロナの影響を受ける前の業績で比較します。比較対象は国内最大のブライダル企業であるテイクアンドギヴ・ニーズです。
コロナ前から怪しい兆候が
ワタベウェディングのリゾート事業は44.4%を占めています。依存度はテイクアンドギヴ・ニーズのおよそ3倍になっていました。
沖縄県観光振興課が実施した調査によると、沖縄リゾート婚の実施組数は2017年の15222組を境に減少に転じています。リゾート婚の頭打ちはコロナ前から鮮明になっていましたが、依存度の高かったワタベウェディングは次の一手を打つことができませんでした。