bizSPA!

コロナと闘う看護師が告白「割に合わない」現状。ボーナス15万円減を提示されたことも

ビジネス

関係者にコロナ陽性者が出て「もっと苦しかった」

病院

「また病院関係者でコロナの感染者が出て、その病棟が閉鎖になったときは、もっと苦しかったですね。まず閉鎖した病棟にもともと入院する予定だった患者は、ベッドが空いている他の病棟へ振り分けられるんです。ひどいときは、呼吸器外科の病棟なのに消化器内科の患者、血液内科の患者がいたりと、複数の他科の患者であふれていました。

 もちろん、疾患によって看護・処置・検査の内容は異なるので、受け入れ先の看護師たちにとっては、通常業務に加えて、普段携わらない疾患の看護や処置、柔軟な対応が求められます。コロナ病棟でもないのに、心身ともに負担は増える一方です。

 その結果、日勤でも21時過ぎに病院を出ることが普通になりましたね。今までは18時には退社できていたのに……。そして家に帰れば、他科の入院患者の疾患に関する勉強をする毎日……。休む暇なんかありませんよ。良かったのは、残業代が少し増えたくらい。それでもこの1年間、手取りで27万円ほどにしかならなかった。35万円はもらってもおかしくないのでは? と思うばかりです

 そのような状況は、いまも続いているのか。Sさんは「いまは少しだけ落ち着いているかな」と言いつつ、先の見えない苦労を次のように述べる。

「ただ私の周りでは、長い闘いに疲れたせいか体調を崩す看護師が出ていて、急な勤務交代が命じられるケースが増えました。またワクチンを打つためだけ、PCR検査を受けるためだけに休日に呼び出されることも増えてますね。しかもその際の残業代の申請については、何も言われてません。要は、残業をつけていいのか悪いのかがわからないんです」

 実際に、師長や管理職には聞かなかったのだろうか?

「私は、ワクチン接種も定期的なPCR検査も病院の命令だと思っているので、勝手に時間外労働として申請していますね。でもきっと申請していない人は多いはず。実際、おどおどしたタイプの後輩は、休みの日にわざわざ来てるのに『時間外労働の申請なんてできません……』と言って、無給で来ています。正直『個人の裁量に任せます』は、いかがなものかと思います」

せめて「危険手当」の範囲に

看護師

 看護師の手当ての中には「危険手当(※3)」というものがある。コロナ患者の対応はそれに含まれないのだろうか。

危険手当はそもそも、手術室、精神科、放射線科の看護師に出るものなので、現状はコロナ感染者の対応をしたからといって手当は出ていませんね。たぶん、私の病院でもコロナ病棟の看護師やICUの看護師に危険手当はついていないはずです。ただもし、看護師を含む医療従事者に負担をかけていると感じるなら、せめてコロナ患者と接する機会が多い診療科や病棟には、特例として危険手当を出すべきなんじゃないかなと思います。現状、医療従事者のモチベーションを維持するのは、給与やボーナスの増額といったお金の面が大きいはずですから」

 最後に。いま一番不安なことは何か聞いてみた。

「この状態がいつまで続くのか、に尽きます。混乱した病床管理で仕事は増えるし、残業も多いし、今までのように看護が行き届かなくてもどかしい。いつどこで感染するかわからないうえに、給料とボーナスはもっと減るかもしれない……。結局はコロナが収束しないと何も解決しませんからね。本当にいつまで続くのかが不安です」

※3:危険手当……看護師の職務上、危険や危害がおよぶ可能性が高い場合に支給される手当のこと

<取材・文/トヤカン>

大学病院の正看護師からフリーライター・イラストレーターの道へ。医療と看護の業界で得た知識と経験をもとに、医療書籍の書評から取材記事、コラムまで幅広く執筆。昨今はLGBT関連の記事執筆・イラスト制作にも携わっている。
Twitter:@toya_kan_dazo

12

おすすめ記事