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コロナ感染者が急増する台湾の対策は…コンビニ入店でも名前を登録

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多くの店舗が採った「実連制」とは?

 当初、コロナ禍で実連制が推奨されたのは飲食店のみであったが、警戒レベルがレベル3に引き上げられた5月15日には大手ドラッグストア「康是美COSMED」と大手コンビニ「ハイライフ」などが実連制を開始。それからわずか2日ほどのあいだに、スーパー「全聯」や、百貨店「そごう」「三越」、コンビニ「セブン-イレブン」「ファミリーマート」など、台北都市圏にあるほとんどの小売大手が追従することとなった。

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「マスクの着用」と「実連制登記」を求めるセブン-イレブンの店舗(台北市)。ちなみにトイレとイートインコーナーも使用禁止となっている

 日本でもこうした登録入店制は博物館などの公共施設やイベント会場、ライブハウスなどで広くおこなわれるようになっており、実際に経験したことある人も多いであろう。しかし、日本ではスーパーやコンビニなどで登録入店を求めている例はほとんど見られない。

 当初、この「実連制」の方式は店舗によってさまざまだった。店頭に記名台が設けられている「アナログ方式」の店舗も多かったが、やがてQRコードを読み取りウェブ上で記名する方式の店舗も増加。また、台湾でファミリーマートを運営する「全家便利商店」(日本法人の子会社)は、18日までに台湾向けのファミマ公式スマホアプリで実連制登録ができる機能を実装した。

 こうした動きを受け、20日からは台湾政府による「QRコードを読み取りSMSを送るだけで登録が済む」という形式の「簡訊実連制」システムが稼働を開始した。これは唐鳳(オードリー・タン)政務委員主導により開発されたもので、各店頭に設置されたQRコードを読み取ると自動でSMS(ショートメッセージ)が生成され、利用者はそれを送信するだけで自分が利用した施設を登録することができる仕組み。利用者の事前登録などは必要なく、送信にかかる通信料も全て無料、店側に個人情報が渡ることもない。また、店側は専用サイトで登録することで、店舗専用のQRコードを入手できる。

「実連制」が生まれて僅か数日であるものの、その方式は急速な進化を遂げ、台湾全土に普及することとなった。なお、台湾では日本で見られるような「レジを覆うビニールカバー」や「飲食店のパネル」などは、資材の都合もあってか5月時点ではあまり普及していないという。そうした面も今後変化していくのであろうか。

閑散とした街は「一時的」との見方も

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入口で消毒・検温とともに実連制の登録確認を行う大手スーパー「全聯」の店舗(台北市)。全聯は日本の業界団体「オール日本スーパーマーケット協会(AJS)」に加盟しており、日本のスーパーとの交流も深いため、今後は「日本流」のビニールやパネル設置が行われることになるかも知れない

 そして、とくに台北都市圏での大きな変化といえるのが「市内の交通状況」だ。

 感染拡大が明るみになった直後、SNS上では交通量が減った台北市内の様子が拡散されて日本でも話題を呼んだ。

 鉄道の利用客も大きく減っている。台北メトロ(台北捷運)の発表によると、5月17日の通勤通学ラッシュ時間帯(朝6時~9時)の利用客数は10日と比較して約43%も減少。さらに、台湾では5月19日から28日まで国内の小中高校・大学・幼稚園を休校させることが決定し、小学校から大学まではオンライン授業が開始されるとともに、12歳以下の子供と障碍児を持つ保護者はほぼ無条件で休暇が取得できるようになったほか、休暇を取得しない場合でも在宅勤務が推奨されることとなった。

 このほか、時差通勤の推奨もおこなわれており、これまで毎朝日本と同様の通勤・通学ラッシュが繰り広げられていた台北の地下鉄も、当面のあいだは「大混雑とは無縁」の状況となりそうだ。

 一方で、台北市の企業に勤務する男性は「こうした交通量の減少は一時的なものではないか」と話す。

 実は、台湾では通勤手当の支給がなされない企業が比較的多い。それゆえ通勤手段を「公共交通機関」から「自宅近隣での移動用に所有しているバイク(もしくは自動車や自転車など)」に気軽に変えることができる。もし、感染拡大が続けば多くの都市住民が生活の足を公共交通からバイクなどに変え、都心で交通渋滞を招くことに繋がる可能性もあるのではないか、という訳だ。

 なお、先述の男性は全学校の休校により「子供が居ない自分たちは優先して出勤させられている」とのこと。例え在宅勤務が推奨されたとしても、平等に行うのが難しいのはどこの国でも一緒であろうか。

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