働いても生活が苦しい。日本で20年間も賃金が下がり続けているわけ
投機には経済活性の効果が一定程度あるが…
「また、労働分配率を上げるため、欧米型資本主義に基づいた“株主ファースト”の経営を企業に強いる政策を是正し、“公益資本主義”に基づいた政策を進めなければいけません。
例えば、企業の四半期ごとの決算報告を廃止する。
以前、日本での決算は通年か、半期(6か月)でしたが、2000年代に四半期決算の報告が義務付けられ、企業に『短い期間で業績をよく見せなければいけない』というプレッシャーが課されました。その結果、長期的な視点を持った経営が難しくなり、人材や設備に投資する余裕がなくなったのです」
最後に、短期で利益を上げるための株式売買“投機”についても苦言を呈す。
「投機には経済活性の効果が一定程度はありますが、過激化してしまうとバブル崩壊やリーマンショックのような事態を招きかねません。ですので、短期株主保有者に対する課税の強化や、利益を株主配当金ではなく、人材や設備投資に多く回した企業を優遇する制度などを設置してほしいです」
実質賃金が上がらない背景には政治経済が大きく影響していることが分かった。2021年は衆議院選挙が行われる。藤井氏が語ってくれたことを鑑みて、実質賃金を上げてくれる、私達の生活を豊かにしてくれる政党や立候補者に注目したい。
<取材・文/望月悠木>
【藤井聡】
京都大学大学院工学研究科教授。1968年生まれ、京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員、東京工業大学教授等を経て現職。2012年から2018年まで内閣官房参与。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論。テレビ、新聞、雑誌等で言論・執筆活動を展開。2018年より表現者クライテリオン編集長