近大生のクラウドファンディング、なぜ炎上した?運営側にも問題が
クラウドファンディングを成功させるための原則とは?
――共感を得るためには、どういったことが必要ですか?
板越:私は「3分の1の法則」を提唱しています。アメリカの大手クラウドファンディング企業である「Indiegogo」のCEO・Slava Rubinさんが言っていることですが、「最初の30%を自分で集められない場合は、Indiegogoでも集められない」という主張は1つのヒントになると思います。
これは、クラウドファンディングでの資金調達を成功させるための原則としても広く知られていますが、自分の友人・知人から3分の1、友人・知人の友達から3分の1、そして、そのほかの知らない人たちから3分の1ずつ資金を集められれば、プロジェクトは達成できるというものですね。
この言葉が教えてくれるのは、すべて他人任せにしないということ。資金調達はもちろん、相手を説得する上でも、自力で何らかの努力が必要になるということです。ただ、日本国内の場合に限ってみると、今回のように炎上した事例ではサービス側にも問題点が潜んでいると思います。
――国内のクラウドファンディングサービスにある問題点とは、どのようなものでしょうか?
板越:まずは、サービス側が仲介する際の手数料が高過ぎるという点が挙げられます。アメリカではおおむね5%が主流なのですが、日本の場合は20%が一般的となっています。
ただ、単純な金額の問題ではありません。本来、クラウドファンディングは資金を募る側と支援者、サービス側が三方良しでWin-Winの関係になるべきで、手数料に見合ったコンサルティングも含めてサービス側が提供すればいいだけの話です。
今回あった大学生たちの炎上事件では、このコンサルティングの部分で、適切な審査がなされないまま公開されたことも問題だったと考えています。彼らのプロジェクトは目標金額に達成せずとも資金を得られる「All in」形式で投稿されました。
クラウドファンディングにはもうひとつ、目標金額を得られなければプロジェクトが未達成となる「All or Nothing」というタイプもあります。
――「All or Nothing」であれば結果は違ったかもしれないと?
板越:審査の段階で「All or Nothing」しか通さなければ、今回の炎上も起きなかったのではないかと思いますが、サービス側も不文律のように流れるある種の批判を逃れるために、手数料に対する責任を避けているようにもみえます。ちなみに、世界ではこのようなトラブルが起こらないために、All or Nothingが常識になっています。
――最後に、今後クラウドファンディングはどのような展開をみせると思いますか?
板越:成熟したアメリカでは「Kickstarter」と「Indiegogo」が台頭していますが、日本国内でもだんだんと似たような状況になるのではないでしょうか。
現在ではクラウドファンディングの認知度も向上してきた反面、いまだ支援者の多くにその意義や役割が誤解されている部分もみられます。ようやくさまざまな事例が出揃ってきた印象もあり、市場が成長するかどうかの真価が問われるのはこれからだと思います。
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矢野経済研究所の調べによれば、2016年度の日本国内におけるクラウドファンディング市場の規模は約745億5100万円で、いまだ成長の兆しをみせています。
みずからが資金を募るだけではなく、支援者として誰かと一緒に夢をみられるというのもクラウドファンディングならではの魅力です。炎上などの問題もありますが、いずれにせよ、日本国内ではさまざまな課題も残されています。
<取材・文/カネコシュウヘイ>
【板越ジョージ】
学術博士。クラウドファンディング総合研究所・所長。東京都葛飾区生まれ。1988年、高校卒業後に渡米し、バックパック一つで世界35か国を放浪。1995年にニューヨークで起業するも「9.11」テロの影響で倒産。その後、2014年にニューヨークでGlobal Labo, Inc.を設立して以降、日本人コミュニティ形成や、クラウドファンディング研究の第一人者として講演活動やコンサルティングなどに尽力。著書に『クラウドファンディングで夢をかなえる本』など。