「俺についてこい」は古い。上司のNG言動で、若手のやる気は削がれている
新たな出会い、春の訪れに、20代は心を躍らせているだろう。しかし、迎える側の上司たちは「若手社員の本音がわからない……」と接し方に困る人が少なくないという。
そこにはアンダー30のbizSPA!世代と、オーバー40の上司世代のあいだでの深刻なコミュニケーションのズレがあった!
U-30社員のやる気を削ぐ上司のNG言動とは?
敵を知り、己を知れば百戦危うからず。U-30世代としても上司がどんな考え方を持っているのか知っておく必要があるだろう。建前の壁を越え、若手社員のやる気を引き出したいとき、上司世代はどんな点に気をつけているのか。
「若手社員の成長を望むなら、まずは結果を求めないことです」
そう語るのは、かつて自身が部下から総スカンをくらった経験を生かし、次世代リーダー研修などを手がけるthinkshift代表取締役の浅野泰生氏(@yasuoasano_ts)。
「“組織の成功循環モデル”という考え方があります。結果の質、関係の質、思考の質、行動の質という4つからなり、同じサイクルでも何からスタートするかで結果が変わってきます。結果の質から問い始めるとバッドサイクルに。部下が上司に対して“じゃあお前もちゃんと仕事しろよ”と関係が悪化し、思考が鈍くなり、指示待ち人間となって行動の質も悪くなります。
グッドサイクルにするためには、関係の質から問い始めること。お互いの信頼関係を構築すると自主性が生まれ、思考の質がよくなり、能動的な行動にも繋がる。信頼があれば、同じ言葉でも伝わり方が変わります。当然、結果も良くなるという仕組みです」
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<部下のやる気を引き出す言葉3選>
1. いつも助かっているよ、ありがとう
2. ○○のために君にこの仕事を任せたい
3. 君ならではの○○を期待しているよ
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“俺についてこい!”のような一方通行ではダメ
では、関係の質を高めるためにはどうしたらいいのか。
「ビションの共有ですね。大事なのが、会社やチーム単位だけでなく、一対一のコミュニケーションの場を設けること。『ビジョンは理解できるけど、じゃあ自分は何をすればいいの?』と部下が疑問を抱くことはよくあります。『君は○○の能力が高いから○○に期待してるよ』など“あなただから”というメッセージを具体的に込めた、個に対してのビジョンを伝えます。私もかつてそうでしたが、“俺についてこい!”のような一方通行ではダメなんです」
このとき、伝え方にもテクニックがあるとか。
「口頭ではなく、解釈のブレを防ぐために文字にして伝えることです。口頭では、言う側も聞く側もそのときのコンディションに左右されてしまうので。あえて紙面にして渡し、すぐ見返せるようにするのもオススメです」
しかし、関係を構築するにもテレワークのご時世では対話もしづらい。浅野氏は普段からこんな工夫をしているという。
「定期的な面談はもちろん、部下が好きそうな話題があれば、雑談のチャットをしています。例えば、ラーメン好きの部下には“おいしいお店あったよ”など。たとえリモート環境でも相手に関心があるという気持ちは伝えられます」
若手社員の本音に近づくためには、歩み寄りが不可欠だ。
<取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/古泉智浩>
※週刊SPA!4月6日発売号の特集「U-30[建前⇔本音]翻訳検定」より
【浅野泰生】
人財成長プロデューサー・thinkshift代表取締役。自身の経験に基づいた独自のマネジメント理論を体系化。著書に『部下のトリセツ』(総合法令出版)