毎日新聞、かっぱ寿司まで。コロナ禍で相次ぐ「大企業の中小企業化」の背景
考えられるデメリットは2つ
こうしてみると、業績が落ち込んだのなら中小企業化するのは悪くはない道のように思える。一方で、中小企業化するデメリットはあるのだろうか。この点についても森氏は指摘する。
「会社の業績不振を公にしてしまいますので、会社の信用力(銀行、取引先)が減少するケースがあります。顧客からのイメージダウンにもつながるでしょう」
まずあげられたのは対外的な評価だ。当然ながら中小企業よりも大企業のほうが信用がある。信用力の低下は避けられないだろう。そして、もう1点として企業の内部的な問題があげられた。
「日本人の中には『大企業だから』という理由で働いている人も多く、中小企業扱いになることで、社員のモチベーションダウンに繋がり、退職につながる可能性があります」
政府の負担は増えるのか?
企業としての魅力が減少することにより、就職の選択肢から外れたり、また離職する人が増えるということが考えられる。実際に「減資した企業の早期退職優遇制度を見ると、定員を遥かに超える人が応募しています」と、すでにその影響が出ているというのが森氏の分析だ。
大企業が中小企業化することによる経済や社会全体への影響はあるのだろうか。
「大企業には使えない補助金を中小企業であれば使えるという点で政府の負担は増える可能性があります。ただし財源として大きな増加ではないため軽微に留まると考えられます」
国家レベルで見た時に、補助金としての歳出が数億円、もしくは数十億円増えたとしても大きな影響はない。仮に補助金を目的とした中小企業化のケースが続いても、その事自体で経済が揺らいでしまうということはなさそうだ。さらに、森氏はこのように続ける。
「中小企業白書2020年によれば、事業所別で99%の企業が中小企業となっていますので、社会に対する影響も小さいものと考えられます」