毎日新聞、かっぱ寿司まで。コロナ禍で相次ぐ「大企業の中小企業化」の背景
毎日新聞、JTB、スカイマーク……。多くの人が一度は名前を聞いたことがあるであろう日本を代表する大企業だ。しかし、名前をあげた企業の全てが資本金を1億円にまで減資して、税法上での中小企業となるケースが続いている。
この3社の他にも、「かっぱ寿司」を経営しているカッパ・クリエイト株式会社、居酒屋の「庄屋」の株式会社大庄、同じく「居酒屋 はなの舞」のチムニー株式会社なども中小企業化。飲食業大手においても、中小企業化の流れが顕著だ。
これらの企業はなぜ中小企業化を選択したのか、また今後も同様のケースは続くのか、そして社会全体にはどのような影響があるのか。株式会社森経営コンサルティング代表で経営コンサルタントの森泰一郎氏に話を聞いた。
中小企業化の背景には巨額赤字?
森氏によると大企業が中小企業化する理由は大きく2つに分けられるという。
「1つは資本金を減資し、欠損の補填をしたり配当を維持するため。もうひとつは節税・補助金の活用です」
そして、今回の中小企業化の流れでは「前者の理由が大きい」というのが森氏の分析だ。つまり、資本金を減らさざる負えないほどに赤字が拡大してしまっている。
「日本企業の多くは業績に関わらず安定配当を行う企業が多くあります。当然、巨額の赤字になっていると配当の資金源がなくなってしまいます。そこで減資によって配当の資金源を作り出すということです」
冒頭で紹介したJTB、スカイマークは観光業と航空業。そして、カッパ・クリエイトなどは飲食業なので、いずれもコロナによるマイナスの影響が大きい業種だ。中小企業化の背景には森氏の分析通り、赤字の影響があるのではないだろうか。
大企業は支援が充実していない
大企業が中小企業化する理由には、大企業の状態を維持することが難しくなってきたという懐事情が前提としてある。その上で、森氏が大企業があげた2つ目の理由「補助金の活用・節税」についても紹介したい。
「コロナ禍で中小企業しか活用できない補助金が多数整備されていますが、それらは大企業では受けることができません。減資をすること(中小企業化することで)で補助金を受け取ることができるようになります」
中小企業であれば日本政策金融公庫・商工中金等における貸付を数億円の規模で受けることも可能だ。しかし、大企業に対してはコロナの助成金や支援が充実しておらず、特に貸付に関する国の支援は今のところ用意されていない。
また、中小企業は大企業よりも税金面でも優遇されているという。
「中小企業は繰越欠損金が活用できます。これは赤字の後で黒字転換した場合でも、一定期間および一定額までは過去の赤字と今年の利益とを相殺し、税負担を軽くできる制度です。この制度の活用により税金の支払いによる現金の減少を抑えることが可能です」
コロナ禍における助成金や支援、そして税金面での優遇。こういったメリットは中小企業化を後押しする要因としてあるのではないだろうか。