立ち食いそばチェーン4店の「テイクアウト年越しそば」食べ比べ。1番本格的だったのは
2)小諸そば「甘味と出汁の香味が余韻を残す」
続いて紹介するのは「小諸そば」。製麺・炊飯・食品加工・流通事業などを手掛ける三ッ和グループが運営しており、公式WEBサイトによると首都圏を中心に64店舗(2020年12月末時点)を展開しています。近年は高級志向の系列店「蕎麦きり みよた」や「蕎麦きり みまき」も出店。新規顧客の囲い込みに取り組んでいます。
他のチェーン店と比較すると価格帯が数十円ほど低く、かけそば290円、「二枚もり」350円、かき揚げそば400円など財布に優しいラインナップに。しかし、立ち食いそば店の定番トッピングであるコロッケやゲソ天、春菊天などは取り扱っていません。競合店と一線を画す一種のブランディングだと考えられます。
気になる年越し用「生そばセット」(660円)はどうでしょうか。そば(3~4人前)、希釈用つゆが入っている点は他のチェーン店と大差ありません。しかし、小諸そばの場合はさらに追加で出汁パックが! そう、出汁をとる工程があるのです。
沸騰したお湯に出汁パックをそのまま入れて約10分。煮出している間、かつお出汁のふくよかな香りがふわりと立ち上がり食欲をそそられます。黄金色の出汁に希釈用つゆを加えたらつゆのできあがり。このひと手間はつゆへの愛着が沸くのに十分な時間をもたらします。
小諸そばといえば、更科粉を使った白いそばでおなじみ。細麺でつるりとした食感が楽しめます。つゆを口に運ぶと最初にキレのある醤油がきて、甘味と出汁がじわりと余韻を残します。上品な仕上がりはテイクアウトでも変わらず。別途販売の「上生そばセット」(1000円)や「ごまだれせいろ」(830円)も期待できます。
……と思ったのですが、残念ながらすでに販売終了してしまったようです。来年2021年に期待しましょう!
3)ゆで太郎「挽きたて・打ちたて・茹でたて」
「ゆで太郎」はゆで太郎システムと信越食品の2社で運営している立ち食いそばチェーン。出店エリアは首都圏にとどまらず、北は北海道から南は福岡県まで200店舗を越える直営店・フランチャイズ店が進出しています。
年間20店舗という驚異的な出店ペースを支えたのが店内に設置された製麺機。自前で製麺できるので、工場からそばを仕入れる必要がなく出店できるエリアに制限がないのです。
自家製そばは小麦粉4.5割、そば粉5.5割の配合(信越食品の店舗はそば粉5割)。小麦粉の割合を増やしている立ち食いそば店が珍しくないなかで、「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」を徹底するゆで太郎は業界でも異彩を放つ存在です。
こだわりの詰まった自家製そばは年の瀬に限らず「おみやげそば」(600円)として店頭での購入が可能。筆者がお店のスタッフに注文したところ、その場でそばを箱詰めしてくれました。内容はそば(2人前)、希釈用めんつゆ、わさび。いたってシンプルな構成は「そばのクオリティで勝負する!」という気概の表れでしょうか。なんとも心強い。
細麺ということもありそばの茹で時間は約2分とスピーディ。ややグレーのそばはざらざらとした歯触りでしなやかなコシがあります。つゆは甘味がやや強い印象を受けます。かつお節、宗田節が力強く香る点はお店のクオリティに忠実だといえます。盛りそばで食べたらそば粉の風味をより感じられました。
食卓を豪勢に飾るなら「天ぷら盛り合わせ」(280円)のテイクアウトを忘れずに。海老天・舞茸天・なす天・オクラ天の4品が破格の値段で楽しめます。