大企業と中小企業、どっちが社員に「還元」している?今さら聞けない会社へのギモン
従業員の固定給を勝手に下げることはできない!?
安藤:当然、企業側には固定費の増加は負担であり、不況時に経営が苦しくなる要因ともなります。
太郎:そう考えると新型コロナで大変なのに、今までと同じ給料なのって実はすごいですか?
坂田:業績が悪化したからといって従業員の固定給を勝手に下げることはできません。働く側の士気にもかかわります。だから、会社は固定給を上げる代わりに「賞与」で調整するのです。
安藤:会社は赤字に陥ったら借金してでも給料を払うが、所詮それは継続不可能な仕組み。仕事が減って給料が同じなのは「ラッキー」ではなく「バグ」なので危機感を持つべきですね。
坂田:財務体質が良い会社は「内部留保」と呼ばれる蓄えがあるので、一時的な赤字は、蓄えを取り崩して給料を払います。大企業が倒産しにくいのは、ビジネスが大きく内部留保があれば、金融機関も融資してくれるからです。
売り上げに占める給与の割合って?
会社:会社がどれだけ従業員に分配したかは「労働分配率」という指標で測れるよ。これは人件費(給与以外に福利厚生費、退職金、年金掛け金、教育費なども含む)÷売上利益で求められるんだ。
だから、例えば月の売り上げが1500万円で、仕入れ総額が500万円、人件費が600万円の会社の労働分配率は、600万円÷(1500万円-500万円)×100=60%となるわけ。近年、資本金10億円以上の企業は50%台前半で推移していて、一般的に50%くらいが基準といわれることが多いかな。
太郎:企業規模による労働分配率の推移を見ると、中小企業のほうが分配率が高い。従業員に還元しているってこと?
会社:それだけギリギリの経営をしていて、不況下で付加価値が減った結果として、労働分配率が上昇したとも考えられるよね。高すぎる労働分配率は、組織の成長や投資にお金が回らず経営を圧迫する要因になることもあるんだよ。
【坂田岳史】
中小企業診断士。’61年、京都府生まれ。18年間コンピュータ業界で活躍し、現在はIT経営コンサルタントとして活動。会社の仕組みにまつわる著書を多数執筆している
【安藤広大】
組織マネジメント専門家。’79年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、NTTドコモに入社。転職を経て’15年に識学を設立。コンサルティング実績は1600社超。著書に『リーダーの仮面』
<取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/今井ヨージ 図版/松崎芳則>