「カフェブームの立役者」に聞く、ミーハーから流行を生み出すには
ブームを予見し、外苑前にカフェを開店
「最初は何やろうかと考えましたが、カフェブームの草分け的存在である『バワリー・キッチン』が駒沢にできて以来、“夜カフェ”というジャンルが注目されるようになった。当時は空前のカフェブーム夜明け前という状況で、まさにカフェしかないと思い、カフェの物件を探し始めました」
そこでたまたま出会った物件が、父親が借りていた外苑前の交差点に位置するビル。雑居ビルの5階だったが、夜景が綺麗な立地で「仕事後の仕事場カフェ」というコンセプトのもと「OFFICE」というカフェを立ち上げた。
「カフェのインテリアやロゴ、POPなど友人のデザイナーらと一緒に手弁当で作りました。また、企画にもこだわって店内のギャラリーやDJブースの設置、モデルやタレントなど影響力のある女性に日替わり店長を任せるなど、人の溜まり場になるような空間になるよう工夫しましたね」
空間プロデュースの仕事も手がける
こうした緻密な空間づくりや、もともとの伊勢丹時代に築いた人脈が活き、OFFICEは大いに賑わいを見せるカフェとして知られるようになる。 そして、父親がオーナーを務めていた同ビル1、2階のトラットリアの改装に挑む。
あまり客足が伸びておらず「カフェに改装して、運営をやらせてくれないか」とテコ入れを打診。新たに「Sign」というカフェに業態変更したところ、これもヒットし、カフェブームの火付け役と称されるほどの人気店となっていった。
「OFFICEとSignの成功がターニングポイントになって、事業が軌道に乗り始めたんです。幸い、ファッションやクリエイティブ業界の知人が多かったことから、人づてで広がっていき、まさに『仕事が仕事を呼ぶ状態』になっていきました」
ここからトランジットの代名詞とも言える“プロデュース”の仕事が増え始める。アパレルや自動車といった有名ブランドのカフェを手がけるほか、目黒にあるホテルクラスカ(Hotel CLASKA 2020年12月で閉館)ではホテルのプロデュースと運営受託を引き受け、デザイナーズホテルの先駆けとして注目を浴びる。