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被災地・宮城を技能実習生で救う。インドネシアと地域をつなぐ男の挑戦

ビジネス

気仙沼を支える「関係人口」の重要性

気仙沼

菅原さんがインドネシアに建設したプラント

 また、菅原さんは「実は震災の時、ちょうど津波が来るエリアで車に乗っていてもうちょっとで流されるところだったんです。思わず車を降りて、近くの工場に逃げ込みなんとか助かりました」と語る。

 その日は津波の被害を受けて、工場の屋根の上から動けず、翌日になってようやく町中を歩いて助かったという。

「それで何かできることがないかと市役所に立ち寄ったら、遺体運びと、がれき撤去を手伝うことになりました。あの時までは自分の会社のことしか考えていなかったですが、はじめてそれを越えた『地域にとってどう自分たちがどう貢献するのか?』に気づかされたんです

 その日を境に、生かされた自分の命をどう使って残りの人生を生きていくかを考え始めた。そして、気仙沼という地域を存続させるための「関係人口(地域や地域の人々と多様に関わる人々のこと)」に気づいたのだという。

「気仙沼市の人事部」をつくるプロジェクト

 このインドネシアの事業は今年のグッドデザイン賞を受賞し、現在ではインドネシア政府関係者とも会話できるほどの関係を構築。菅原さんはインドネシアと気仙沼を繋ぐ大使的な存在となった。そんななか、菅原さんは新たに気仙沼市の人事部を作るというプロジェクトを始動させた

「だんだん自社の事業が大きくなって、いくつも会社ができました。ただ、自社の人材獲得が困難になったので自社グループの人事部を会社ごとでなく一本化したんです。でもその時、これうちの会社だけでなく地域中の課題だよな、って思ったんです」

 人材不足に悩む地域を思えば、自社グループの人事をひとつにするだけでなく、地域中の人事をひとつにしてはどうか。それにより会社で動くより大きな力になるのではないか、と考えたようだ。

 実際には気仙沼にあるさまざまな企業が人材獲得や育成を行っていく「合同プロジェクト」をつくるというものだ。現在、このプロジェクトに賛同した企業が地域内で数社現れて、協働で気仙沼へのインターン生や採用の機会を作っている。

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