「さいたま新都心は、海のない豊洲」湾岸 VS 埼玉の住宅事情を比較<のらえもん×すんで埼玉>
埼玉はマンションと戸建てをどちらも選べる
――湾岸エリアについてふと気になったのですが、湾岸エリア内でタワーマンションではなく戸建てという選択肢はあるのでしょうか?
のらえもん:このあたりは戸建てがそもそもが現実的ではないです。そうですね、月島の佃辺りだと築古の戸建てや、豊洲隣接の枝川だと狭小3階建ての住宅も選べるかもしれませんが、選択肢としてはごくごく限らられていますね。
すんで埼玉:その点では、マンションと戸建ての両方を選べるのも埼玉のメリットかもしれませんね。関東の一都三県でも、埼玉は抜きん出て戸建ての希望率が高いというSUUMOの調査もあるんですよ。理由にあるのは土地の安さで、大宮から少し離れた北上尾のようなエリアでは、建売なら3000万台から新築が買えるし、都心へのアクセスが電車1本でありながらコスパがいいという特徴もありますね。
ただ、大宮や浦和といった中心地の徒歩10分圏はだいぶ土地が高くて、東京の一部のタワマンより物件価格も高くなっています。だから、埼玉とひとくくりにするのも難しいし、特に浦和なんかはもう埼玉県から外していいくらいだと思います。
のらえもん:それは分かる(笑)。でもまあ、戸建てを考えるなら、やっぱり都内よりも郊外のほうがいいですよね。都内の市町村部は別として、都心に近い地域で立派な戸建てに住みたいって考えると1億5000万円くらい出さないとちゃんとした戸建てに住めない。そんなに住居費にお金かけられないですよ。
――戸建てにこだわる人の理由って何でしょうか?
すんで埼玉:家自体の広さや隣近所の騒音問題であったり、あとは、駐車場の問題も大きいのかなと思います。
のらえもん:マンションだと駐車場代がかかるしね。湾岸でクルマを持つとなると月々で駐車場代が2万〜3万円くらいかかるけど、埼玉で戸建てなら駐車場代がいらない。月3万円は、35年ローンで換算すると約1000万円に相当します。戸建てはマンションより予算が上乗せできるんです。ただ、戸建ての場合は修繕費は自分たちで計画的に貯めていかなければいけないから、さじ加減は難しいよね。ところで、埼玉で戸建てを買う人は共働きなの?
すんで埼玉:感覚的な話ですけど、奥さんが専業主婦か、リモート環境を導入しながら共働きをしている人たちだと思います。共働きで二人とも都内でフル出勤をしている人たちは、そんなにいないと思うんですよ。フルで働いて共に年収400万円だとしても世帯年収は800万円になるので、それならば埼玉で住む理由がなくなるじゃないですか。
だから、リモートワークをしながらスキルを活かして取り組める職種か、旦那さんの稼ぎだけで充分な生計を建てられている世帯が現実的ではないのかなと思います。
ムダなプライドは荒川に置いていけ!
のらえもん:フルタイム正社員の共働き家庭となると、湾岸まさにそれに特化したエリアなんですよ。世帯年収でいえば1400万〜1600万円というのもザラだし、歩道事情や近隣の環境も広々としていて子育てもしやすいから。
すんで埼玉:だから、正社員の共働きでしっかり生計を立てられているのであれば、埼玉を選ぶべきではないですね。やっぱり東京にいるべきなんですよ。じつは、僕が自分の事業を通して訴えているのは、のらえもんさんが言っていた方々ではない中間層で、“ギリギリ東京で生活している人たち”なんです。常々「ムダなプライドは荒川に置いていけ!」と言っているので(笑)。
――(笑)。まあ、どうしてもダメなら埼玉へ戻るという選択肢はありつつも、埼玉出身者からすると、出戻りにはある種の“都落ち”みたいな感覚もありますしね……。
すんで埼玉:でも、僕のメインターゲットは埼玉出身の人なんです。相談に来るカップルのお客さんをみても、男女どちらかが埼玉に由来を持っているんですよ。違う地方から来る人だと、あえて埼玉を選ぶ人たちが少ない印象もあって。
のらえもん:そうだなー、上京してきて東京に通いながら戸建て買いたいってなると、溝の口とか高津、稲城か若葉台、南大沢や橋本ってなりませんかね。東京から西エリアがメインになると思う。
すんで埼玉:そう、「この辺なら世間的にも大丈夫だろう」みたいな(笑)。たしかに、僕も都内の大学を出てから東京で働いて、埼玉に戻るのはある種の“負けた感”もあったんですよ。でも、そういう時代でもないというのを事業を通して提案していきたいですね。
<取材・文/カネコシュウヘイ>