バチェラー司会・坂東工、コロナ下こそ「アートの重要さを感じてほしい」
新たにアーティスト活動を続ける理由
――本格的にアーティスト活動を続けるなかで、2018年には会社を設立され、オンラインミュージアムやブロックチェーン技術など新たなことに取り組まれていますが、いま力を入れていることは?
坂東:最初は結構順調で手ごたえもあったんですが、コロナで展示会がすべて飛んで大打撃を受けました。でも、そのときに思いついたのがアートの可能性を生み出すプロジェクト。そこで、「つながるピース」という25枚の絵で1つの絵画になる作品を作り、ブロックチェーンのICをすべてに付けました。
それによって、所有者が二次流通すると利益の10%が権利者であるアーティストに配分されるシステムになっていますが、今回僕はその権利を放棄して医療機関に寄付しているので、流通が増えればどんどん寄付金が集まる仕組みです。これならアートを売買したことがない人もユーザーエクスペリエンスを積むことができますし、社会貢献にもなるので、アートを通じてどんどん新しい繋がりができると考えています。
――とはいえ、アートをビジネスにするのは、なかなか厳しいところもあるのでは?
坂東:めちゃくちゃ難しいですね。しかも、うちはギャラリーとしては新参者ですし、格式の高いアートフェアに出せるほどのネームバリューもないですから。でも、そこで気が付いたのは、別にアート業界に割って入る必要はなくて、僕らは僕たちのアートを使って、新しい人たちと出会って行けばいいんだということ。
実際、「つながるピース」では50枚分の絵がすぐに完売し、50名の方々と繋がることができました。そうやって新たなアートファンを生み出すことは時間のかかることですが、単なるビジネスというよりも、この人生で何をやるのか、ということになってきた気がしています。
コロナでアートの見方が変わった
――そのなかで、経営者としての苦労も感じることはありますか?
坂東:もちろん、辞めたいと思うこともしょっちゅうありますよ(笑)。でも、いまは本当に仕事が楽しいですね。20代の頃は何のためにやっているのかわからなかったですけど、楽しんでやったほうが結果的にいい仕事ができることに気が付いたんです。いい意味で肩の力を抜けるようになったのかな。
日本は、鬼気迫るほどの努力することが美徳のようにされていますけど、最近は「イーストウッド監督みたいにワクワクしながら仕事すればいいんじゃない?」って。手を抜いてはいないですけど、僕も年齢とともに使い分けができるようになってきました。
――コロナでビジョンが大きく変わったことはないですか?
坂東:アートのテーマも見せ方も相当変わったと思います。ただ、この状況でみなさんが心の豊かさについて考え始めているので、いまが転換期だなと。これまでは仕事ばっかりだった人も音楽や映画、そしてアートに触れることの重要さを感じているはずですから。
この前も、zoomに映る背景が白壁で寂しいからと言って作品を買ってくれた人がいましたが、これまで求められていたのとはまったく違うニーズがアートにも生まれているんですよね。