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第三のビールが値上げ。酒税法改正に「本麒麟」担当者のホンネ

ビジネス

本麒麟がここまでヒットした理由

 なかでも本麒麟は、2018年3月に発売されると3か月で1億本に達し、発売2年目となる翌年も前年6割増の実績で成長している。今年に入ってもその勢いは衰えていないが、選ばれる理由は何なのか。

 永井氏によれば、理由のひとつには「発泡酒・新ジャンル=ビールに比べて品質が劣る」という思い込みが強い中高年に比べて、新ジャンルにそこまで偏見を持たない若い層にもリーチできたからだという。

「カテゴリー意識が強い40~50代の層に比べて、若い人たちは思い込み意識がなく、SNSでの情報や評判になった物なら素直に反応してくれます。事実、お客様調査のデータを見ても、本麒麟の売上が伸びるたびに若い層のシェアが上がっていて、ある意味、彼らが新ジャンルを支えてくれています」

 また、インパクトのある赤い色、本麒麟=本気のキリンという解釈から選んだという人も多かったという。さらに今年の3月から江口洋介、杏が出演していたテレビCMに新たにタモリを起用したが、これも功を奏したという。

「あえて新ジャンルとイメージが遠そうなタモリさんに本麒麟を飲んでもらい、味にお墨付きをもらえたことで、味と品質にこだわったブランドという訴求をよりできた。これまで新ジャンルに興味が薄かった層にもアピールできたと思います」

酒税法改正に生産者の本音は?

キリンビール

「商品としてのバリューを磨き上げていくだけ」と、永井氏

 とはいえ、酒税法改正は2017年、2018年にも行われ、新たなビールの開発を促してきた一方、生産者側はそれに振り回されてきた感もある。永井氏は「お客様のなかには『新ジャンルが値上がりするのは苦痛』という声もある」としつつ、本音を述べる。

「たしかに世界を見ると、日本の酒税はいびつですし、税率が高いのは事実。ただ、今回の改正は、その複雑さを是正しようとするものです。メーカーとしては、お客様に本当に美味しいと思ってもらえるものを出す姿勢のほうが大事だと考えています。本麒麟としても法改正後に負けない商品としてのバリューを磨き上げていくだけです」

 まだまだ先行き不安な世の中、消費者の目がシビアになるなかで、最後に新ジャンルの今後について永井氏はこう語る。

「酒税法改正もあり、10月以降は新ジャンルの売上は落ち込むという予測を立てていました。しかし、コロナによる巣ごもり需要、価格志向もあり、売上を思いっきり伸ばしていこうと戦略を考え直すことになりました。本麒麟にはキリンのモノづくりのすべてが詰まっているというメッセージを訴えていきたいです」

<取材・文/詠シルバー祐真>

株式会社扶桑社第二編集局SPA!Web編集部「bizSPA!フレッシュ」編集長、詠(ながみ)です。映画と音楽が好きです。

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