政府ゴリ押し「ワーケーション」は日本社会に根付くのか
出張前泊もワーケーションのひとつ
また、ちょうど今連想されているワーケーションとは少し異なるようにもみえるが、米国発のアウトドアブランド・パタゴニアは鎌倉に日本支社をかまえていて、社員たちはランチタイムにサーフィンを楽しんでいる。
同業種のスノーピークも新潟県三条市のリゾート地に本社を構え、ブランドの色を打ち出している。さらに、昔から別荘でリラックスしながら優雅に仕事をするという層も一定数はいたのだ。
そして、細かな部分をみれば私たちもどこかでワーケーションを実現している。出張の合間にレジャーを楽しむ「ブリージャー」と呼ばれる業務形態を推進する動きもある。
例えば、出張の仕事で現地でやるべき作業や商談の合間にそこでしか食べられないグルメを堪能したり、前泊や後泊で観光地を巡るのも、ワーケーションのひとつとして捉えられるはずだ。
この辺りは人によって解釈が異なるかもしれないが、会社のルールの中で仕事と休暇を両立できる可能性は残されているようにもみえる。
形骸化する可能性は残る
ワーケーションもリモートワーク化などと共に「働き方改革」の一環となりうる。ただ、仕事をしながら休暇を楽しむのか、それとも休暇を楽しみながら仕事をするのかは大きな違いで、社員の働き方として根付かせるのか、福利厚生のひとつとするのかは企業文化によっても異なるだろう。
先輩や上司が体験してきたのかによっても異なるはずで、職場で働くこと自体を美徳とする世代からは「遊んでいるだけだろ」と後ろ指を差されるかもしれない。また、制度として設けられていたとしても、誰も使わなければ形骸化するだけになるし、プレミアムフライデーのように、多くの場所で言葉だけが先行する状況にもなりかねない。
こうした疑問をいくつか並べてみると、ワーケーションにも「仕事の本質」が見え隠れする。仕事とは何らかの成果を上げるのが本質で、どこでやるべきかは問題の本質とはいえない。
コロナ禍では、社会のあらゆる動きが「5年早く加速した」と指摘する声もあるが、職場とビジネスパーソンの意識をどうすり合わせていくのかは今後の課題といえそうだ。