政府ゴリ押し「ワーケーション」は日本社会に根付くのか
コロナ禍でさまざまな変化がみられる中で、注目されているのが「ワーケーション」と呼ばれる働き方だ。休暇をしながら仕事をするという選択肢ではあるが、果たして日本の社会にどう根付いていくのか。現状や課題について、考えてみたい。
旅行業界を助ける策と思われているが…
政府側の奨めるワーケーションには、どうも文脈の違いがあるようにみられる。そもそもワーケーション自体は今に始まったことではなく、一般的には、休暇を楽しみながら合間で「在宅勤務」をするという解釈で、休みながらも仕事をするスタイルを定着させようという流れはあった。
しかし、コロナ禍で県外への移動制限が課せられる中での旅行業界の得策と思われている節もある。
菅義偉官房長官は7月29日の会見で「観光は地方創生の切り札」としていたが、本来、ワーケーションはワークライフバランスを実現するための施策だったはずで、現状では「休みながらも仕事をする」という目標の達成にはまだ遠い。
また、旅行業界の得策だとしても、誰にとっての利益になるかどうかも疑問にある。じつは、旅行業界と一言でいっても「誰が当事者なのか」については曖昧な部分も残されている。
JAL、富士ゼロックスはすでに実施済み
航空や鉄道などの交通業界、宿泊施設、地方にある小さなお土産屋も広くいえば旅行業界で、感染拡大が続く中で政府が提言した「GoToキャンペーン」には批判の声もあったが、働く人たちや業界など、関わる人たちを切り分けてみるとワーケーションの利点を誰が享受できるのかは視点によって考え方も異なってくる。
昨今、職場のリモートワーク化や在宅勤務についてはさまざまな事例がみられるようになった。しかし、ワーケーションについてはまだ、現場レベルでの実例が少ないのが現状である。
例えば、JALは昨年すでに「徳之島ワーケーション実証事業報告会」を実施し、富士ゼロックス鹿児島や徳之島町と協力して、休暇と仕事の両立を実際に検証していた。