Airbnbから消えた物件「民泊新法よりもキツかった運用実態」ホストが語る
撤退理由は、民泊新法&近隣クレーム
――今回、民泊を撤退するのは新法施行によるものですか?
あくの:新法と近隣クレームがあります。先ほど紹介した隣地BBAがクレーム入れてくる物件は、些細なことで都度クレーム電話をかけられ続けて、最終的にオーナーの奥さんがPTSDになってしまいました。
オーナーから「妻がもう本当に限界なんです……」と切実な声で相談されて断念しました。こちらも事業目的で借りてるので解約に抵抗する手もありましたが、近隣の評判も踏まえ、さすがに可哀想になりそのまま撤退しました。
――確かに、近隣との関係はあまりうまくいってなさそうですね……。
あくの:ほかの区分所有物件は、新法施行により撤退です。もともと管理規約が曖昧な区分所有だったのですが、新法施行後はもうやりようがないです。6月15日以降は新法を背景に施設の立ち入り、事業の停止処分等ができるようになるし、法を犯してまで続けるメリットはありません。
民泊撤退コストは1件20万円?
――民泊撤退で苦労された点はありますか?
あくの:戸建2物件からの撤退は、全宅ツイの「新宿太郎総帥」(@from_naname)に、40万円払って片付けて頂いたのでノンストレスでした。
――撤退物件の家具家電ってどうなるのでしょうか。
あくの:40万円を受け取った新宿太郎総帥が台湾人と一緒に撤去していきました。あとは知りません。
――今回の民泊運営で得た知見はありましたか。
あくの:オペレーショナルアセットがピタッとハマった時の収益力は魅力的だな、と改めて見直しました。民泊実務についていうと、セットアップは労力が必要ですが、実オペレーションは賃貸管理の延長線上にあり、さほど難易度は高くありませんでした。
とにかく集客プラットフォームであるAirbnbの偉大さを実感しました。Airbnb以外にも現行の規制をテクノロジーで開放するUberなどのサービスも革新的で可能性を感じています。
民泊は残念ながら不労所得とはなりませんでしたが、ホテル業態の面白さの一部が垣間見えました。願わくば新法改正する議員に献金して、一部制度を緩和して180日規定を解除してほしいです。
――ありがとうございました。
あえなく撤退となったものの、その経験を糧とする前向きな姿勢を見せるあくのふどうさん氏。いつの日か不動産文化人として、今回の知見が後世で評価されることがあるのかもしれません。
<取材・文/栗林篤>
【あくのふどうさん @yellowsheep】
「不動産ブローカーです。以前は新興企業で、買収企業から不動産を剥ぎ取る山賊業に従事していました。会社消滅後は、曖昧な雑居ビルの一室で、金融機関担当者の靴をせっせと磨いて借りた大切なお金で、隣地のおばあちゃんのほっぺを叩いては敷地を広げる賤業に従事しています」