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なぜ日本の若者は幸せに見えないのか?フジテレビ社員が映画で伝えたいこと

暮らし

テレビ業界で味わった苦しい思い

 田部井監督自身も、テレビ業界という華やかな世界に身を置くが、20代の頃は仕事で思い通りにいかない日々が続き、何度も辞めたいと思うほど苦しい時期があったと話す。

「実はあまりテレビを見ない家庭で育ったのですが、ある日深夜に放送されていたフジテレビのドキュメンタリーをたまたま見て、自分も作りたいと思って受けたところご縁があって入社することができました。ただ、ADとしての下積み時代がなかなかつらくて……。でも、辞めるにしても1本作ってからにしようと思い、それをモチベーションに何とかがんばれました」

 その後、女性たちの貧困を追った『刹那を生きる女たち 最後のセーフティーネット』を手掛け、第23回FNSドキュメンタリー大賞を受賞することに。そして、この作品から受けた影響も、田部井監督をムヒカへと向かわせたひとつの理由でもあったと振り返る。

「『ドキュメンタリーを作りたい』と言っていた自分が浅はかだったなと思うほど、撮影を終えたあとに疲弊しきっていたんです。自分の力のなさにしんどくなり、コンプレックスを感じていたときに、ウルグアイでの取材の話をいただいて、『気分転換になりそうだからラッキー!』と思って受けました」

なぜ日本人は幸せに見えないのか?

ムヒカ

「あの頃の僕は本当に何も考えていなくて、映画の発端となった最初の取材もその程度の動機でした。でも、ムヒカに会ったおかげでドキュメンタリーに対する欲がもう一度出てきて、一度は見限ろうと思った道をもう一回進んでみようと思えるようになりました」

 本作では、ムヒカが幼い頃から日本人と長年にわたって深い関わりがあったことが明かされている。

 しかし、一方でムヒカは日本に対し、「すごく進歩を遂げた国だが、産業社会に狂わされていて、日本人が幸せかどうかは疑問だ」という言葉も残している。ムヒカから言葉を受け取った田部井監督も、この時代だからこそ日本の若者に感じていることがあるという。

「いまはソーシャル時代なので、当然のことながら他人の人生がうらやましく見えるような情報が洪水のように溢れていますよね。そうすると、他人の“いいね”が軸になったまま生きていってしまうことも起こりうると思っています。ただ、人生の行きついた先で『あれ? これが自分の人生だったんだろうか?』となるのが一番怖いこと。だからこそ、自分の“物差し”をしっかりと持つことが大事だと思います」

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